Lisa

Laundry ランドリーのLisaのレビュー・感想・評価

Laundry ランドリー(2001年製作の映画)
5.0
【Laundry】から紐解く窪塚洋介という役者の魅力


Twitterの更新を再開し始めて、ありがたいことにこちらのフォロワーさまも増えてきているので(フォローありがとうございます!)
とても久しぶりに長々と感想を綴りたいと思った次第です。

そして久しぶりに思ったことを言語化したい、と思ったのは
私の「邦画部門・ベストムービー」であるこちらの映画です。
文字通り、もう数えきれないくらい観ました。
この映画についての感想を、ネットで検索すると私の拙い言語力などより断然巧くまとめておられる記事がすでにたくさんあるので、
せっかくなので少し角度を変えて、というよりも視点を限定的にし、この映画の主人公を演じた窪塚洋介さんを通して少しばかり述べさせていただきたいと思います。


当時レンタル屋さんで見かけてなんとなく手に取ったのは、この映画が世に出てさほど時間が経ってはいない頃だったと思います。
いかんせんだいぶ前の話(2002年ごろ)なので、ちょっと記憶が定かではないのですが、DVD特典のコメンタリーか何かで窪塚くんが

「このテルという役は自分から最も遠い」

そんなようなことを言っていたんです。

なるほどたしかに、2000年のTBSドラマ「池袋ウエストゲートパーク」で一世を風靡し
2001年公開の映画「GO」の杉原、
この映画と同年の2002年には
「ピンポン」のペコ、「狂気の桜」の山口など
当時の超・話題作の主演を演じてきた彼です。

私も子どもでしたので、ではこの「Laundry」がどれほどの地位を当時の映画業界で確立していたかは詳しく知りませんが
先述の作品群ほどではなかった…と思います。

当時の若者特有のギラギラ感、
素っ頓狂なキャラクター、
そんな役が本当にぴったりで、そして周囲にも求められていたであろう彼が
じゃあなぜ、「自分から最も遠い」このテルという役を演じたのか。
そして森淳一監督は、テルが持つピュアなイメージとかけ離れている彼をなぜわざわざキャスティングしたのか。

この映画のことを書こうと思った、ここ数日ずっと考えていました。

結論を書く前に、このテルというキャラクターをもう少し掘り下げたいと思います。

「子どものころマンホールに落ちた時にできた頭の傷」ということですが
おそらくなんらかの障がいを持っている彼。
祖母が持つコインランドリーの見張り番をしていて、彼の世界は自宅とコインランドリーのみ。
小雪さん演じる水絵と出会うことで、そんな小さな小さな世界から飛び出していく…とても大まかに言うと、この映画はそんな内容なんですが。
口数が極端に少ない役でもありますし、
彼が本当は何を思っているのか、映画を観ている私たちには分かりかねる部分も大いにあります。

実際、1人の人間にフォーカスする物語として観ていくと、この映画の主人公はテルというより水絵なんです。
過去のことや、心に抱えた傷の詳細を映画の中で語られるのはもっぱら彼女の方で。

内藤剛志さん演じるサリーが水絵に「あいつは絶対にお前を裏切らねえよ」と言ったように、テルはいつでも、どこまでも、ひたすらにまっすぐ水絵を愛していました。


テルはいつでも、どこまでも、ひたすらにまっすぐ…。


そう、これです。
一見、キングやペコとは全く異質であると感じるテルというキャラクターを、どうして当時の窪塚洋介という俳優が演じたのか。

この、まだ幼い少年が持つようなまばゆいばかりの純粋さ、きらめきが
窪塚くんが演じてきたキャラクターの共通項であり、
彼の唯一無二の魅力であり、
彼が世間に求められた理由であったのではないのでしょうか。

この映画の終盤、テル自身が「海辺の少年」になっているシークエンスがあるのですが
その歩き方、立ち振る舞いが、同じ帽子をかぶっているのに、テルとは少し違うように思えたものです。
どうして演じ分けたのか、ただ単純に昔話のシーンだから。というわけではないように私は思うのです。
窪塚くんの、普段どおりに歩いてくれる?
そんな演出が監督の方からあったんじゃないかな、なんて思うんです。
ポランスキー作品「水の中のナイフ」に出てくる青年のような、まだ何にも染まっていない、透明度が高すぎるが故の危うさ、そして美しさを間違いなく彼は持っていました。

他にもこの映画について、数少ないセリフのことや、主題歌であるatamiの「Under The Sun」のことなど
ここが素晴らしい、ここが大好き!と、語りたい話題は他にもたくさんあるのですが。
窪塚くんの持つ魅力があってこそ、いや、彼でなければこの映画は私の中ではここまで響かなかっただろうと思うのです。
もう20年も前の映画なんですね(笑
20年前からずっと、一番好きな邦画です。きっとこれからも変わらずに一番のままだと思います。


この映画の感想という点では少し話が逸れてしまいますが、
「沈黙 -サイレンス-」のキチジローで久しぶりに演者としての彼を観て、
窪塚洋介という役者は、本当にすごいんだなと感じました。
その話はまた別の機会に。
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