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マトリックスのymdのレビュー・感想・評価

マトリックス(1999年製作の映画)
4.5
" Fist in the air in the land of Hypocrisy!!!! "

この映画が日本で大ヒットしていたとき、ぼくはまだ小学生だったのだけど、その鮮烈でインパクトのあるヴィジュアルは難解なストーリーなんてこれっぽっちも理解できない小学生たちの間でも大いに盛り上がっていた記憶がある。
2006年に荒川静香がイナバウアーで一世を風靡するまで、えび反りと言えばこの映画のキアヌであり続けていたのも記憶に新しい。

公開当時に観た記憶はあったものの、改めて鑑賞してみると未だに比類ない情報量とオリジナリティに圧倒させられる。

香港のカンフーアクション映画や日本のアニメなどをモチーフにして作り上げられているものの、その凄まじい記名性ゆえにもはや完全にオリジナルの世界を築き上げており、今作が後のSF・サイバーパンク作品に与えた影響は計り知れない。

ヴィヴィッドでエッジ―なヴィジュアルに対して物語自体は非常に哲学的・自己啓発的であるのも今作の持ち味だろう。
一本の寓話としての世界観の作り込みが極めて高度だからこそ、本作はハイプでなく今も語られ続ける存在になっている。

「見ていた世界は偽物だった」という至極オーソドックスで普遍的なSFテーマを起点にして、デジタルとアナログ、肉体と精神、仮想と現実という相反する事柄を対立させるのではなく文字通り行き交いながら展開していくストーリーテリングと演出は見事というほかない。

SF映画というのはテクノロジーの進歩に(よく悪くも)最も干渉するコンテンツであるけれど、今作は公開から20年経った今でも全く風化していないのも、この映画の先進性を物語っている。

いわば厨二病的(もはや死語?)なセリフ回しに関してはやや時代を感じるものの、それも本作の思想性を補完する役割と思えばそれなりに楽しめるし、抽象的な言葉たちにも意味が宿っていることがしっかりと映画の中でも示唆されているのでさほど気にならない。

あらゆる面できわめてよくできた、SF映画史に残る金字塔的な作品であると改めて思うばかりである。

本作以降のシリーズ作は未見なので、来たる4作目公開までの間、じっくり鑑賞していこうと思っています。
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