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マトリックスのtjZeroのレビュー・感想・評価

マトリックス(1999年製作の映画)
4.0
① 本作を監督したウォシャウスキー兄弟は、21世紀に入ってから性転換して共に女性となり、姉妹となりました。

② わが国では2018年、ある国会議員の「LGBTには生産性が無い」という発言が物議をかもしました。

このふたつの事象を元にして本作を読み直し、レビューを”更新”してみたいと思います。

本作における未来の人類は、生産性を最大限に発揮するため培養器に入れられ、システムへのエネルギー供給源となっています。
その対価としての快楽は、妄想の中のみ。

これは、経済効率の名目でブラック企業で働かされ、娯楽はネット内のSNSやゲームのみ、という現代人と一致します。

本作の主人公ネオは、レジスタンスのリーダーであるモーフィアスから青と赤のカプセルを示され、
「システムの奴隷となって、生産性に奉仕するか」
または、
「システムから外されても、己を解放するか」
の選択を迫られます。

これは、製作当時(1999年)にはまだ転換手術を受けていなかった兄弟の、心の葛藤を反映しているのかもしれません。

そういう意味で本作は、レズビアンのパトリシア・ハイスミスが原作を書いた『太陽がいっぱい』の直系に当たる部分もあります。
『太陽~』もまた、格差のシステムをぶち壊そうと、苦しみもだえる青年が主人公でした。

このように本作は、過去にも現在にも、そして未来にも開かれているからこそ、傑作足り得ているのだと思います。

リアルタイムでは無くなった過去作でも、その後の事象を絡めて読み直し、レビューを”更新”してみるのも一興だと思います…それが”ヴァージョンアップ”につながるのかはさておき。
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