菩薩

歓待の菩薩のレビュー・感想・評価

歓待(2010年製作の映画)
4.0
「こんちわ」の応酬に小津を、2階の小部屋と駆動し続ける輪転機の調べに「男はつらいよ」を思い出さずにはいられないが、確かに小津作品の隣家との境界線であれ、「男はつらいよ」の団子屋と朝日印刷の境界線であれ、かつての「下町」のそれは非常にシームレスな描かれた方をしていたのかもしれない。そうして緩やかに維持されて来た共同体に流れ込む新自由主義の潮流…なんとも現代社会そのもので乾いた笑いが出るが、共同体維持の為に受容よりも排除にご熱心な日本の姿が炙り出されて来る。この歓待=お・も・て・な・しの文化が今何より日本人自身を痛めつけている訳だし、最後の狂騒の後の後片付けの虚しさなんてまさに五輪そのものを物語っている様で吐き気がする…。社会がグローバリズムに舵を切っていくことに関する恩恵と弊害、日本そのものが外国化していけばわざわざ留学なんてする必要も無くなるが、外資の侵入によってこの様な「下町」は尽く破壊されていくのも事実。このバランスをどう維持していくか、闖入者の「もうそろそろか」の一言よりも、輪転機が鳴らし続けるミニマルビートが彼等に飲み込まれていく瞬間が最も戦慄が走る。籠の中の小鳥は例え死んでも代わりがいるもの…。
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