いの

歓待のいののレビュー・感想・評価

歓待(2010年製作の映画)
3.8
スカイツリーの足元。そこで、その部屋で、どんなことが繰り広げられているか、川岸から双眼鏡で覗くと見える。下町の小さな印刷屋。間口は狭く、奥に長い住居。実に色んな人が、出たり入ったり。意外な一面がみえてくる。腹に一物があったり、腹を探ったり、腹をくくれなかったり、・・・なーんてことを自分自身で意識しない程度には、各自ぼーっと生きているようにも見える。下町のこの小さな印刷屋に、若くてキレイな〝奥〟さんがいることにも、そもそも訳あり感があるのに、そこに、逃げた小鳥のかわりに古館寛治が舞い込んだことから、あれよあれよと、腹腹(ハラハラ)する展開に。


この小さな印刷屋を舞台に、人がどんどん動いていくんだけど、動線というのか、その動かし方が実にお見事。川岸で、草むらを奥の方に駆けていく子どもの姿に、『淵に立つ』を急に思い出して、心底心配した。古館寛治はもしかしたら、赤いシャツを着ていたのかもしれないな、それが透明の赤だっただけで。ホームレスや不法労働者を排除する/しない、ということまで持ち込まれ、これを近所の住民の視点で鑑賞するのもイヤだし、かといって印刷屋夫妻のただただ巻き込まれていくだけな感じもちょっとアレだし、ホント、監督は意地の悪いところを突いてくる(褒めてます)。なのに、なぜか終着点は爽快、ここがこの家族の始まりなのかも、とか。わけのわからない気持ちにもなった。「こういう時どんな顔すればいいのか、わからないの」とつぶやく視聴者(わたし)に、量産型コトリは、「笑えばいいと思うよ」と言ったに違いない。
いの

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