たかやん

渚のシンドバッドのたかやんのレビュー・感想・評価

渚のシンドバッド(1995年製作の映画)
5.0
今回は初夏の高校が舞台の夏映画第3弾『渚のシンドバッド』‼

この映画ではなんと"浜崎あゆみ"がメインの女子高生役で出てる!
大丈夫かな?と見る前の心配をよそに…なんとも絶品の演技を披露。この存在感は『愛のむきだし』の満島ひかりを彷彿させるほど。もちろん『愛のむきだし』と本作は毛色が全然違いますが(^_^;)
ウィキペディア先生によると元々は女優デビューしてテレビ・映画・Vシネマと活動、本作公開しばらく後にボイストレーニングのため渡米し歌手デビューの準備に入ったんだとか。
そのまま女優業に専念されてたらどうなってたんだろう??

浜崎あゆみについてはこの辺に。
映画のストーリーの方に話題を移すと、橋口監督だけあって『ハッシュ』の高校生版のような、やっぱりゲイがお話に絡んでくる(笑)今回は高校生、同性愛者としてのアイデンティティを確立しきれてない不安定な点で『ハッシュ』と比べてより見応えがあった。

岡田義徳演じる高校生=伊藤はゲイゆえに父親に通院させられ、別居する母との確執について「おまえが男だったらわかってくれたのにな」と小言を言われ、教室では茶化され…もう彼に感情移入すればするほど周囲の雑音ひとつひとつがグサグサ突き刺さる。
そんな伊藤は同じクラスメイトで部活仲間の吉田(=演じてる役者さんは知らない方)に想いをよせる。この吉田を中心に性を超えた三角関係あるいは四角関係(?)が繰り広げられる。

「好きだからセックスしたいの?」
「セックスしたいから好きなの?」
あるいは
「セックスできないから好きになれないの?」

そんなカオスな疑問がぐるぐる渦巻く。
そう、問いかけられていることはもう同性愛だとかストレートだとかの次元ではないもっと根本的。10代だと特に疑いもなく「好き」を直感で確信する。そんな状態で簡単に人に「好き」とか言って、それで良いの?
劇中の浜崎あゆみに画面越しにそう言われてるよう。



話題を変えて学校生活の日常パートについて。高校生だったころは気づかなかったけど、生徒それぞれがそれぞれの独立国家を築きトランプがとん挫したメキシコの壁同然に見えない壁をつくる。
優等生、体育会系、文化系、帰宅部のイケイケ系とイケてない系…とみんなそれぞれ大変だ!と教室世界を見事に形成している。

たとえ相手にマイナスな感情抱いても、表面上は優しいふりして、変に賢く立ち回ってお茶濁しそのまま卒業してしまう。とても独力だけではたどり着きないような領域に連れてってくれる、そんな映画体験。


橋口監督作品の次は『ぐりるのこと』をいずれまた(´・ω・`)