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隠し砦の三悪人の小のネタバレレビュー・内容・結末

隠し砦の三悪人(1958年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

理想と現実の争い。フィクションの世界なら理想が勝つのが王道だけど、「嘘臭さ」をどう克服するかが問題なのだろうと思う。エンタメ感の強い本作のような作品ならなおさら。

お家再興を託された雪姫の脱出(理想)が、お金次第で簡単に敵にも味方にもなる太平と又七の百姓コンビ(現実)にかかっていて、その2人を真壁六郎太が巧みに操るドキドキハラハラな絶妙なバランス。

クライマックスは囚われの雪姫たちと敵の侍大将・田所兵衛が対峙するシーン。この後の"理想"の勝利を予感せずにはいられない。伏線を回収し、こういうことってあっても良いよね、と思わせる要素が集約されている。

雪姫が敵国内で救った自国領民の娘の言動、百姓コンビの振る舞いや火祭りを通じて"現実"を知り、"理想"の名君になったであろうと思われる雪姫の言葉。これに触れた田所の行動が無理なく受け入れられる。

手抜きなく、徹底的に考え抜いているからこそ、構成というか、造形というか、骨格がしっかりしていて、スキを感じさせない。だから黒澤監督作品は後世に残る名作なんだろうね。
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