ひでやん

隠し砦の三悪人のひでやんのレビュー・感想・評価

隠し砦の三悪人(1958年製作の映画)
4.6
戦に敗れた侍大将が、姫と軍用金200貫とともに同盟国へ逃れるため、敵陣を突破する娯楽活劇。

冒頭、侍大将を演じる三船敏郎の視点からではなく、二人の百姓から始まる構成が面白い。

見るからに弱々しい二人、太平と又七の印象は「ザコキャラ」だ。戦国の合戦で例えると、武将が戦うその後ろで、音もなく一瞬で斬られる「その他大勢」

背景と化すような二人に黒澤明はスポットを当てた。侍大将の六郎太と出会うまでは二人の百姓が主役で展開される。そんな二人は世界的に有名なキャラクターのモデルになった!農民万歳!

主要人物を「スターウォーズ」のキャラに重ねると、ルーカスがどれだけこの作品から影響を受けたのかよく分かる。

百姓視点で観ると、六郎太は威張って命令ばかりするイヤな奴。抜け道は教えないし、砦のなかでありもしない金を掘らせるバカヤロー。

六郎太視点で観ると、「おい」と呼んでいた二人がいつの間にか「兄貴」と呼ぶのが面白い。視点を変えるとどちらも主役になる。

「何の恨みがあって砦の中なんか掘らせやがった」

「お前達の根性を試した」

飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになった。

何度も逃げ出す百姓に笑い、関所を通る場面や、迫り来る追っ手にハラハラし、槍の決闘に興奮し、火祭りは見応えがあった。ヤッヤッヤヤヤー!

特に、駆ける馬の上で敵を斬りつける場面の迫力と疾走感は圧巻。

馬を売り、百姓娘を連れ、薪を燃やす六郎太一行は、敵が持つ「情報」に対して姿、形を変えていく。

ラストシーンで、走る馬から右手を伸ばし、片手で娘を持ち上げて馬に乗せた六郎太にビックリ!なんちゅう力だ。

「裏切り御免!」と言う田所兵衛がなんとも気持ちいい。

愉快で痛快な冒険活劇だった。
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