ツクヨミ

囚われの女のツクヨミのレビュー・感想・評価

囚われの女(2000年製作の映画)
3.5
答えの無い愛に溺れていく青年と女性であることの弊害を感じるアケルマン的"めまい"
恋人のアリアーヌが好きで堪らないシモンは、彼女と一緒にいない時にストーキングするほど愛に溺れていき…
シャンタル・アケルマン監督作品。特集"シャンタル・アケルマン映画祭"にて鑑賞、女性監督として有名なアケルマン監督がヒッチコックの"めまい"的な作品を手がけた印象を強く受けた。
まずオープニング、波が強い海の情景からスタートしカラーのサイレントフィルム風で女の子たちが海水浴を楽しんでいるシークエンスにモンタージュするのがけっこう面白い。海から海へのカッティングも良いし、サイレントフィルム映像を見せる奇抜さはパゾリーニの"テオレマ"を想起させるようなオープニングだ。
そして始まる本編、男が好きな女をストーキングする様を見ていく仕様がめちゃくちゃヒッチコックの"めまい"っぽくて良い。車で追っていく謎の緊迫感、階段を登りながらゆっくり追跡する美ショット、サスペンスを煽る不穏なBGMなどなどミステリアスな女性に魅せられつけ回すのが本当に"めまい"っぽい。
しかし"めまい"とは違うのは中盤からで、主人公シモンが恋人アリアーヌの行動に困惑し狂っていく過程にあった。シモンがアリアーヌと会話する時の男性優位的なセリフというか男性視点が当たり前に聞こえるセリフがめちゃくちゃ勘に触る。だがそんな言葉にも謙虚に対応するアリアーヌ、ここがアケルマン監督的な対応なのだろうか男性優位社会に隷属するまではいかないが冷静になる展開がめちゃくちゃ個性的な見せ方だった。
そして後半一悶着あってからのラストの展開はなかなかのインパクトで空いた口が塞がらなかった。けっこう賛否両論ありそうな解釈ができるラストだが、個人的にこれを見てアケルマン監督の描きたいものが、男性優位社会に対する警鐘とその離脱か解放を描きたいのかなと感じた。ヒッチコック的"めまい"もいいがアケルマン的"めまい"はまた違っていいなと感じたの確か。
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