叶愛

ショーシャンクの空にの叶愛のレビュー・感想・評価

ショーシャンクの空に(1994年製作の映画)
4.3
私を、あらゆる〝本物〟が蔓延る映画の世界の入口の双璧を担ってくれた、ウディ・アレンの「人生万歳!」と並ぶ、もうひとつの作品です。

どうしてこの作品を見ようと思ったのか、当時、映画が好きだった好きな人ともっと話題が欲しくてみたいな感じで、手に取ったような気がするけど、違う気もする、全く思い出せなくなってしまった。けれど、これを見た高校一年、私の小さな小さな映画の世は、これまでにない大きな革命を遂げたし、そしてその後、史上で一番のスピードの広がりを見せることに、確かになった。

それまで、宮崎駿をはじめとするアニメ作品、ディズニー作品を一作一作何十回も見て、他の人からそれ味のしなくなったガムじゃねレベルに噛みに噛み、しかし美味さを感じていた自分、これらがあれば生きていけるなと思い、そして恐らく、多分生きていけたあたしに、舞い込んできた今作。大袈裟に言えば、でもある意味正しいのだけど、これを見ていなかったら、その後あたしが見ていく映画は全く別の、いや、きっと変わらないままになっていただろうし、この映画が、あたしのその後見る映画をがらっと変えてくれた、広げてくれた。第一印象は、かっこいいだった。こんな映画があるのか、かっこいい、と思った。そしてこの映画を良いと感じられることが、嬉しいと思った。鮮やかな色がわんさか出てくるわけじゃない。夢や希望に満ち溢れてなんかいない。それでも、家族で見ては良さが薄れる作品に、1人で見て、1人で解釈し、1人でその良さを噛み締めるべき映画に、初めて出会った時のその感動を、忘れちゃいけないなと思った。その後パルプ・フィクションを見るまで、こんなに口の悪い台詞ばかりの映画があるのかと新鮮だったし、パーフェクトワールドを見るまでこんなに男性の心の内側をありありと映像で、言葉で見せる作品があるんだと衝撃だったし、作中で容赦なく、好きになった人物が死ぬさまに、開いた口が塞がらなかった。

場所を厭わない喫煙、リタ・ヘイワースに口笛を吹く男達、ハンク・ウィリアムズの熱唱、ありのままの怒りを顕にする彼ら、トーマスニューマンの海の音、後悔にまみれた人生、救いのない場所で抱く希望。有名であるとか、そんなことはどうでもいい。多くの人の目に触れ、手に触れ、私が触る頃にはベタベタの指紋だらけになっていたってそんなこともどうでもいい。感動や、どれだけ好きか以前にこの作品には心の底から感謝の気持ちでいっぱいだ。映画という世界の中。画面の中から、今までと全く違った、映画への見入り方を教えてくれた本作にビールをあげよう、あたしは勿論、主人公にならって飲まない。(嘘飲めない)

今でも覚えているけれど、初見時、作中で一滴も出なかった涙が、鑑賞後、何気なく聞いた、映画と全く関係の無い好きな音楽が耳に入ってきた途端、ボロボロと泣けて泣けて溢れ出てきた不思議な感動を、忘れられずにいる。自分が何気なく摂取しているあたり一面の好きなもの、良いもの、それらがいかに素晴らしいかを、新たに、自分の意識の及ばぬところから、伝えてくれるパワーを持った作品でした。