スガシュウヘイ

海の上のピアニストのスガシュウヘイのレビュー・感想・評価

海の上のピアニスト(1998年製作の映画)
2.5
"You take a piano.
Keys begin,
The keys end.
You know there are 88 of them.
Nobody can tell you any different.
They are not infinite.
You are infinite.
And on those keys,
the music that you can make is infinite.
I like that. "


“ピアノは無限ではない、
 それを弾く人間が無限なんだ。
 人間が創り出す音楽が無限なんだ。
 そこが好きだ。”



「船」という有限の世界の中で、
無限の音楽を奏でる事はできても、
世界そのものが無限になってしまったら、
その中で何かを創り出すことはできない。




映画とは関係ありませんが、
村上春樹の『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』に
こんなシーンがありました。

「百科事典棒」
爪楊枝のある一か所に点を打つだけで
百科事典になるというシーンです。

まず文字を数字に置き換えます。
あ⇒0001
い⇒0002 ……
のようにすべての文字を数字と対応させます。

そして百科事典の文字を
すべて数字に置き換え、並べます。
とてつもなく長い桁の数字になります。

最初に0をつけて、小数にすればできあがり。
その小数と対応する場所に点を打てば、
爪楊枝のなかにも
膨大な情報を詰め込めるというのです。

中に詰められた情報の量は、
楊枝の長さと関係ありません。
それが、二百メートルの木材であろうが、
赤道であろうが何でもよいのです。


ピアノの鍵盤が88でも
そこから作られる音楽は無限。
百科事典棒と似てるなぁ、と
思いました。



最後に1900はこう言います。

"Land is a ship too big for me"

1900という人間の
儚さ、
繊細さ、
汚れのない美しさが
このセリフに集約されていると感じました。


製作:1999年(伊・米)
監督:ジュゼッペ・トルナトーレ(『ニュー・シネマ・パラダイス』)
出演:ティム・ロス