pika

フィッシャー・キングのpikaのレビュー・感想・評価

フィッシャー・キング(1991年製作の映画)
4.5
ギリアムに対する部分的な苦手意識は何作見ても拭えず評判の良い今作を見てみたらびっくり仰天、最高じゃないか!
ギリアムの演出がめちゃくちゃハマってて、この演出だからこそこの魅力!というくらいドラマと語り口が互いの良さを高めあっている。
他の映画では違和感として感じられていた突然の妄想や幻想の描写が今作ではキャラクターの感情描写に直結した重要で素晴らしい演出として機能していて、それによって表面に描かれたドラマの奥行きがさらに広がっている。出会った二人の友情、価値観の共有という意味に繋がっている。

ロビン・ウィリアムズ最高。素晴らしい。夜中の公園での『息子がブラブラ〜』のダンスよ!笑
正気なのか狂気に逃避しているのか、ガチなんだけどふと『誰に話してんだ』と突っ込んだり(それも普通の反応ではないが)
ジェフ・ブリッジスも演じているように見えないガチさが見て取れ、ラストの病院のシークエンスは心の底から喜びに溢れていて心地良い。
アマンダ・プラマーの野暮ったい可愛らしさ、彼女を見つめるウィリアムズとセットで愛おしすぎる。

想い人を見つけた瞬間退勤しているサラリーマンでごった返している空間が突如ダンスフロアに様変わりする演出、普通の街中で幻覚を見ていきなり冒険が始まる展開、最高の愛の告白から急直下で哀しみに変わるシークエンスの衝撃。

幻覚による芝居がかった奇行と料理を前に一人自分を慰める一人芝居とを並列に見せることで誰もが現実と幻想の中で生きていると見せているような。
間延びして一見蛇足のように見えたりシークエンスの繋ぎ目が野暮ったく見えたりとてもスマートとは言えないところもあるけどシーンひとつひとつの強烈な魅力を前にしたらそんなもんどうでもよくなる。一貫していないシーンの数々はちぐはぐだからこそ楽しくて次に何が起きるのか見れるのかずっとこの映画を見ていたいと感じるくらいワクワクとして楽しい。

人に救われ、救おうとすることで自分も救われる。取り返しのつかない後悔に苛まれ、見なかったものを発見し、見えないものを見ようと他者に寄り添う心。
目には見えない愛や悲哀が映画という魔法で可視化された傑作。最高でした。ギリアム!!!!
pika

pika