拓風

きけ、わだつみの声 Last Friendsの拓風のレビュー・感想・評価

2.0
昔観たことがあるがWOWOWでやっていたので再観賞。

戦勝国と敗戦国では描き方も違っては来るだろうけど、敗戦国である日本が作る映画としての絶対的なお題目は「戦争は悲しく辛く、愚かなこと」というものだろうと思う。

そこの描き方に評価をする一方、別の評価基準として「それが事実かどうか」というところがでてくる。
もちろん事実に基づいたフィクションの場合は主人公たちは架空の人物だとしても、その周囲や状況がどうか。

戦争という題材は絶対的な正義は存在しないのでイデオロギーを入れやすい。

例えば「こんなにひどいことをしてきた」に対しての「そんなはずはない、実態はこうだ」というものなどのように。

現実世界でも決着がついてないもの、また事実認定もある程度流動性を含むものなので、ましてや映画では作る人、時代によって描き方はそれぞれにならざるを得ないと思う。

それらを踏まえてこの映画。

若者を通じて戦争の悲惨さ、それを取り巻く状況の悲惨さも描いているが、どこかカラッとしていてドロドロしたものはない。
CGのない時代に実際に機体を使うといったみるべきところもある。
髪型や軍としての行動、最後のラグビーなどツッコミどころもある。
ただ全体的に味付けは薄い。
その分、広く観やすい映画にしているのかもしれないが、今見直して残るものはあまりない。
この描き方であれば織田裕二あたりに焦点を絞ってもっと緻密に描いた方が映画としては見どころがあったかも。

あとは、このタイトル。
あの手記からエッセンスなどを取ったんだろうけど、これはタイトル負けではないか。
英語のサブタイトルつけるくらいなので、制作陣もわかっていたのだろうか。

うわずみを色付けするより、戦争の悲惨さ、当時の若者の思いを知りたいなら何より原作を読むのが一番ダイレクトに伝わる。
というか、原作でしか伝わらないものがある。
その原作の要約や抽出でもない今作は、そこを伝えられていなかった気がする。
拓風

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