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悪魔の手毬唄のnoteのネタバレレビュー・内容・結末

悪魔の手毬唄(1977年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

文明社会から隔離され、古い因習がいまも力を持つ鬼首村。村に伝わる手毬唄。その歌詞に見立てた殺人事件が発生する。事件解決を依頼された金田一耕助。犠牲者は事件の背後に村を二分する二大勢力、由良家と仁礼家のうら若き孫娘たち。金田一は真犯人を見つけ出すため、失われた手毬唄の秘密を追うが……。

石坂浩二の金田一耕助シリーズ第二弾。
シリーズ中、最も完成度が高く、悲しい物語だ。

前作よりショッキングな演出は少ないものの、抑えた演出と陰鬱な色彩で、村にみちる閉鎖的な空気がひしひしと伝わる。
終始、夜かと思わせるほど日が差し込まず、闇に包まれた村で起こった連続殺人事件を金田一耕助が追う。

事件は悲しい過去に囚われた1人の母親の犯行だった。
旅館の女将リカの元亭主が、由良家と仁礼家の娘を拐かし、孫娘たちを孕ませる。
激情にかられるまま、リカは夫を殺害したが、それを村の男に目撃され、脅迫されたリカは日蔭者として暮らしてきた。
その孫娘たちが自分の息子を婿にと愛し始めた時、実は異母兄妹であることを知らぬ子供たちの禁断の関係を絶つために殺人に及んだ…。

配役から真犯人はすぐに想像出来る。
謎解きの面白さよりも岸恵子が演じる母親リカの境遇が可哀想で切なくなる。
殺人ではなく、他に方法はなかったのか…?と考えさせられる。

劇中は岸恵子の華やかな見た目の美しさとは裏腹に、陰のある幸薄い女を繊細に演じる演技力に魅せられてしまう。

子の幸せを願う不幸な女性の起こした殺人事件が物語の主軸だが、若山富三郎演じる磯川警部がリカに寄せる仄かな恋慕も切ない。
リカが過去に夫を殺したことを知らず、リカの夫の死の真相を突き止め、リカに夫を忘れて欲しいと金田一を呼び寄せた訳だが、結果的に金田一が真実を暴いたことが悲劇を呼び寄せてしまう。

背景に愛情があるからこそ、運命や宿命にも似た状況下で凄惨な事件が起こってしまったことが余計に悲しい。

警察は相変わらず無能であり、リカは自供した後、警察の目を盗んで底なし沼に身を沈める。
金田一もリカがそうするであろうと予想していながらも悲しい女のケジメの付け方を止めない。

謎が解けた後の金田一と磯川警部の別れも切ない。
事件を解決した金田一は磯川に見送られて汽車に乗り込む。
金田一は磯川に「リカさんを愛していたのですね」と尋ねるが、汽笛に遮られる。
磯川に頭を下げた金田一を乗せ、汽車は遠ざかっていく…。

主要人物の誰もが本当の気持ちを言わずに、最後まですれ違っていく…。
忖度の感度が試される、悲しい愛の物語である。
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