ちろる

虹をつかむ男のちろるのレビュー・感想・評価

虹をつかむ男(1996年製作の映画)
3.9
亡き渥美清さん、そして『男はつらいよ』に永遠に愛を込めたオマージュ作品。

家出をして家を飛びたしふらっと迷い込んだ徳島の小さな町の小さな映画館。

利益度返しで古ぼけたオデオン座という映画館を経営するかっちゃんに絆されて、働くことに。

街にはかっちゃんと同じく映画を愛する仲間達がいてその中に活男を兄の様に慕う八重子(田中裕子)に実はかっちゃんは片想いをしている。想えば想うほど空回り。それはまるで寅さんのごとく・・・

本作は寂れた町、寂れた映画館を舞台に数々の名作映画を通して映画の素晴らしさと人々の優しさを描いた笑いと涙に満ちた作品。
所謂日本版『ニューシネマパラダイス』のような風味もある。
オデオン座で上映されるのはそんな、『ニューシネマパラダイス』に始まり、『雨に唄えば』、木下恵介監督の『野菊の如き君なりき』小津安二郎監督の『東京物語』
などなど。
そして最後にオデオン座でかっちゃんと観るのは『男はつらいよ』。
おもしろいのは、りょう役を演じるのが、『男はつらいよ』で満男役をやる吉岡秀隆さんで、んな彼の東京にいる両親が賠償千恵子さんと前田吟さん。
スクリーンでは、なぜか両親に生写しの俳優を観るというシュールな展開なのだが、そこはこの映画の遊び心。
ずっと、ふらふらしてたりょうも、スクリーンで両親に生写しの俳優を見て懐かしくなったのだろうか、ようやく家路に着く。
そして最後に、なんとバス停の影からトランクを提げた寅さんが一瞬姿を現す。
これは山田洋次監督にしか成し得ないギフト。
そして気がつくのである。渥美清という役者はこの世になくても、彼の魂の入り込んだ『寅次郎』は、いつまでもいつまでもこのわたしたちの中で生き続けてるということを、あの映像が教えてくれる、私にとっては最後まで最後まで幸せな気持ちにさせられるギフトな作品だった。
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