踊る猫

SWEET SIXTEENの踊る猫のレビュー・感想・評価

SWEET SIXTEEN(2002年製作の映画)
4.8
強烈な映画を観た、と圧倒された。二度目の鑑賞になるが、肝腎な場面をすっかり忘れた上で臨んだのでこの映画を舐めて掛かっていたことを恥じた(初見では 4.5 点をつけただろう)。だが、何処から語れば良いのだろう。貧困の連鎖、どん底まで落ちた人々。そこから抜け出そうとする姉と、そこに留まって裏社会にどんどんハマって行く主人公。ベタと言えばベタだが、ブレイディみかこ氏の著作を読んで彼の国のそうした社会事情を知っていたからかより生々しく感じられた。詳しく書くとネタを割ることになるが、最初に星空を見上げる場面を持って来たのが素晴らしいと思った。むろん、意図的なものだろう。どん底の地平から空を見上げる主人公の姿は、明るい未来を夢見る少年の環境をはっきり表しているなと(そういう場面を忘れていたのだ!)。ラスト・シーンは切ない。これこそネタを割るが、彼は結局何処にも行けなくなってしまったのだ。それを彼自身の意図的な選択と見做すか、それとも社会状況に責任を押しつけるか。極めて難しく重い問いにぶち当たってしまった。
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