「SWEET SIXTEEN」に投稿された感想・レビュー

踊る猫
踊る猫の感想・レビュー
2017/03/09
4.8
強烈な映画を観た、と圧倒された。二度目の鑑賞になるが、肝腎な場面をすっかり忘れた上で臨んだのでこの映画を舐めて掛かっていたことを恥じた(初見では 4.5 点をつけただろう)。だが、何処から語れば良いのだろう。貧困の連鎖、どん底まで落ちた人々。そこから抜け出そうとする姉と、そこに留まって裏社会にどんどんハマって行く主人公。ベタと言えばベタだが、ブレイディみかこ氏の著作を読んで彼の国のそうした社会事情を知っていたからかより生々しく感じられた。詳しく書くとネタを割ることになるが、最初に星空を見上げる場面を持って来たのが素晴らしいと思った。むろん、意図的なものだろう。どん底の地平から空を見上げる主人公の姿は、明るい未来を夢見る少年の環境をはっきり表しているなと(そういう場面を忘れていたのだ!)。ラスト・シーンは切ない。これこそネタを割るが、彼は結局何処にも行けなくなってしまったのだ。それを彼自身の意図的な選択と見做すか、それとも社会状況に責任を押しつけるか。極めて難しく重い問いにぶち当たってしまった。
ぶり
ぶりの感想・レビュー
28分
4.1
記録
3ki
3kiの感想・レビュー
8時間
3.9

『わたしは、ダニエル・ブレイク』公開記念!

今まで触れて来なかったケン・ローチ監督作を観てみる!~10~


・青春映画、というジャンルの甘酸っぱさはほぼ無く、どちらかというとイギリスの若者の苦境を描いた、人生の凋落ものという感じ。タイトルの『SWEET SIXTEEN』は完全に皮肉。けどこのタイトルこそが、僕としてはこの映画の唯一の救いにもなってるように感じました。

・主人公のリアムは15歳。友達のピンボールと、寂れたらバーかなんかでタバコを売って生活してたんですが、ある日、海の近くでドライブしてたら、立地が最高なテラスっぽい家が外売りされてるのを見つけるわけです。リアムは留置所にいる母親のためにその家を買おうとするんですが、「タバコ売ってるだけじゃ稼げねぇよ! ドラッグ売ろうぜ!」と言って、母親の恋人であるスタン(こいつのドラッグ売買の容疑を被って、母親は留置所に入れられてる)のドラッグを盗んで、手売りでさばいて稼ごうとします。が、それが街のギャングであるビッグ・ジェイに見つかり、「俺らのシマを荒らしやがって!」と拉致られるんですが、気概のあるリアムだけはビッグ・ジェイに気に入られるんですね。それでビッグ・ジェイの管理下ならドラッグ商売していいことになりまして、リアムはどんどん仲間たちに認められていくんですが、反面ピンボールはそれが気に食わなくて……って話です。

・リアムのこのやり方でしか生きられないという切迫感は、明らかにイギリスの階級社会の底辺で生きている人たちが全員感じてることなんですよね。ピンボールのお父さんは麻薬の売人だったし、団地に住むシングルマザーはヤク中だったりして、イギリスという社会が、そこはかとなくディストピアな閉塞感に包まれてる嫌な感じが全体に漂ってる。

・まず素晴らしいのは序盤の留置所の母親に会いに行くシーンですね。リアムとスタンと爺の3人で、車で留置所に向かうんですけど、その車内でスタンはリアムに「ドラッグを留置所にいるやつらにバレずに渡したいから、この袋を舌の裏にガムでくっつけとけ」と命令するんです。スタンと爺がちょっとした騒ぎを起こしてる隙に、リアムが母親にドラッグを渡すという作戦なんですね。つまり自分の恋人と、その子供にドラッグ売買の手伝いをさせるわけですよ。しかもリアムの母親はスタンの罪を被って留置所に入れられてるのに、スタンはさらにそれを利用するっていうね。もう普通に最悪ですね。

・残酷なのはリアムの母親は、そんなクソなスタンのことを“リアムよりも”好きなんですよ。個人的に、実の母親が父親でもない男と恋人とかをやっててイライラする感じは、僕も同じ境遇になったことあるので物凄く理解できるし、そのときの疎外感の半端なさもよく分かります。

・つまりリアムには自分のことを一番には愛してくれない母親と、その母親に愛されたいということでしか世界が成り立ってない、というのが最初から最後まで一貫してるんですね。そのための法律的な道徳心なんか最初から無いし、気の合う友人や、自分のことを考えてくれる姉や、その他諸々の周囲に拡がってる善意も、リアムは見えてるようで見えてないわけです。まあそれはスタンとか、爺とか、今あるイギリスの労働階級の不況さとか、様々な苦境のせいでもあるんですけど、それでもスタンは一瞬くらい、母親以外の愛に触れているシーンがたくさん出てくるわけじゃないですか。けどそれでもリアムの優先順位は“母親からの愛”なんですね。

・最初から最後まで、リアムは主観的な閉塞感に捕らわれてて、人生を上手く出来るような方法を彼は閃けないんです。そこはリアムの15歳らしい未熟さにも映るんですが、でも実は大人だってみんなそうじゃないですか。僕だってリアムの姉が言うようなちゃんとした生き方をしたいんだけど、なぜかこの方法しか選択できないんじゃないかって思っちゃうときがあり、それ以外の方法はどうしても拒絶しちゃうって瞬間は多々ありますよ。嫌いなやつは殺したいほど嫌っちゃうし、他人からの善意も無下にしてしまうことだってあります。そんな未熟な閉塞感は誰にでもある普遍的なもので、“イギリスの低層階級の若者”という立場よりも恵まれた日本人にとって、その境遇を完全には理解できなくても、ちゃんと共感しうるものとして表現されてるのが、この映画の良いところですね。

・とはいえ、リアムは根っこが善人なので、わりと他者に目を向けるくらいの余地があったはずなんですね。姉の子供や友達に対する態度や、友人であるピンボールへの葛藤なんか、彼が善人がゆえの感情じゃないですか。リアムは実は常識人だし、頭も良いし、本当は未来の可能性がたくさん切り開かれてるはずなのに、何が彼をダメにしてしまったのかというところもちゃんと理解できる、という作りなのが凄くケンローチっぽい。

・この映画を観たあとに『キングスマン』を観ると、溜飲の下がり方が変わってくるんじゃないかな。エグジーがリアムと同じ苦しみを味わってるとしたら、なおさらあの首ボカーン!は爽快感溢れるんじゃないかと。

・僕がケンローチ映画で本当に良いなって思うのは、『リフ・ラフ』同様、確かに社会の底辺のどうしようもなさを基本的に描きつつも、それでも相手を思いやる行為が大事だというのがちゃんと描かれてるとこですね。僕は“利他的な善意”を観るために映画を観てるので、こういう部分は個人的に特に大事なんです。

・難点をいえば、『ファザーランド』や『リフ・ラフ』と比べて、ポール・ラヴァティ脚本作は良くも悪くも展開がベタかつ、一回転しかしないんですよね。この人がこういうことしたからこうなった、というものが持続して繋がってくんないというか。最初にスタンから盗み出したドラッグも、その件に関しては何も問題にならなくなったりするじゃないですか。ピンボールの処遇もあやふやだし。一個話が終わったら、次またもう一個、というオムニバス風味がいつもあって、しかもベタなんで10分先の展開が読めちゃうという(でもそれが悪いってだけでは決してないのが難しいところ。単純に好みの問題かも)。家が燃やされた瞬間、話の流れからして、犯人が誰か見当が付くじゃないですか。絶対スタンじゃねぇだろって。で、本当にスタンじゃないんですよね。そこら辺のベタさはちょっと食傷気味だったりします。

・とはいえそれは、ケンローチ映画を観る上での堅苦しさを軽減してる気はするし、台詞回しの簡潔さもストーリーを非常に呑み込みやすくしてるので、大事っちゃ大事。さらにこの映画に関しては、リアムの若さゆえの未熟さもテーマなんで、そういうベタさが微妙にシンクロしてる気がしないでもないから、一概に難点ってわけではないですね。個人的な好みとしては、もうちょっとアカ抜けてるほうが良いんですけど。

・進むべき方向性を何もかも見失った少年が、じっと海と対峙するというのは、トリュフォーの『大人は判ってくれない』を連想しました。ただ『大人は判ってくれない』と微妙かつ確実に違うのは、“最後に電話が鳴る”ってことなんですよね。あれだけで彼は少しだけ救われてる気がしました。「あなたは今日、16歳の誕生日なのよ」というセリフがこんなにグッとくるとは思わなかった。このセリフに込められた色々な思いを考えるだけでも、この映画の意義があるんじゃないでしょうか。

・というか、海という巨大な、どうしようもないものと対峙して終わる、という映画は個人的には好きです。ていうかもちろんこの映画は好きよ!
はぶられめたる
はぶられめたるの感想・レビュー
22時間
4.2
皮肉すぎるタイトル...

主人公の行き過ぎた愛情は、ボーイズオンザランの田西君を彷彿とさせるなあ...
相手オカンだけど...

まぁこんな環境だとこうならざるを得ないのかも...
やすほ
やすほの感想・レビュー
1日
4.0
sweet sixteenだなんてタイトル、皮肉すぎる。

リアムの何かにすがりついて、自分の支えを持ちたいという無意識的な思いに悲しくなる。それを客観的に捉えられる姉の辛さも分かる。皆の思いが一方通行であるから、救われない。
よしおか
よしおかの感想・レビュー
1日
3.8
面白かった
toto
totoの感想・レビュー
1日
-
タイトルがいいですね
バティ
バティの感想・レビュー
6日
4.4
ケン・ローチでは一番好きかも。痛々しい。
shihong
shihongの感想・レビュー
6日
4.1
記録。
凄く良かった記憶。
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