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サクリファイスのleylaのレビュー・感想・評価

サクリファイス(1986年製作の映画)
4.5
タルコフスキーの遺作であり、息子に捧げた作品。

圧倒的な映像美が先立つ。
モノクロとカラーの境目のようなギリギリの色彩の美しさ。光の当て方にどれだけ気を遣ったのか、1シーンの中でも光(照明)が移ろいでいる。撮影はベルイマン作品を多く手掛けるスヴェン・ニクヴィスト。

繊細な色調と完璧な構図。長回しの中で舞台劇のように語る役者の台詞。


サクリファイス=犠牲、献身

タイトルどおり、犠牲と献身の物語。
突然、核戦争が起こり、アレクサンデルは自らの命を神に捧げようとする。

タルコフスキーの過去の作品が組み込まれた集大成のようだった。私などが軽く何かを言うことができない崇高さを感じます。

自然と神と向き合いながら、人間はどう生きるべきかを映像と言葉で記しているようで、芸術家としての命が宿る作品に思えました。

はじめに言葉ありき。
そこから人類は、どれだけ生きることに不必要なものを作ってきたか。

バッハのマタイ受難曲とラストの長回しに、タルコフスキーの祈りと嘆きを感じました。余韻がやみません。
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