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サクリファイスのpanpieのレビュー・感想・評価

サクリファイス(1986年製作の映画)
3.9
「ソラリス」を観る事ができた私は調子に乗っていたかもしれない。
どうしても「サクリファイス」の白骨の木が知りたくて挑んでみた。
でも冒頭から撃沈した。
宗教と哲学が台詞の随所に表れあまりにも難解だった。
演劇を観ているようだ。
私は残念ながら演劇にも疎い。
でもどのシーンも美しかった。
あの燃えてしまった家の家具の配置や揺れるカーテンが一枚の絵のよう。

巴の家紋が付いた着物をガウン代わりにアレクサンデルが羽織ったり尺八の曲を聴いたり日本に行きたいと言う台詞があったりやたらと日本に関する言葉や物が出てきた。
「ソラリス」でも日本の高速道路が撮影されたりタルコフスキーは本当に日本贔屓だったんだと分かる。

「ストーカー」も「ノスタルジア」もすっ飛ばしたせいかやはり理解が追いつかなく只々長く感じてしまった。
戦争の恐怖を描いていても憂いて泣き崩れたりはあったが割と自転車で出かけたりびっくりするほど淡々と優雅な暮らしをしている。
途中逃げ惑う人々を写している白黒のシーンがあったけど。

皆が探していた坊やは海辺の枯れた木に水をやっていた。
そして枯れた木は私の観たと思っていた木とは全然違っていた。
あれ?
あの白骨の木はどの映画だった?

子供の頃に行った道東のトドワラの風景が圧倒的だった事を思い出した。
トドマツの木が皆枯れて真っ白になっていた。
枯れた白くなった木が林を作っている沼地のあの景色は忘れられない。
あの風景が私の中で何故か今作で出てきた木と重なり間違った記憶が植え付けられていたのかな。
記憶というものは本当に曖昧だという事が分かった。
これに懲りず白骨の木を探すべくタルコフスキー作品を観て行こうと思う。
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