すずき

地獄の黙示録・特別完全版のすずきのレビュー・感想・評価

地獄の黙示録・特別完全版(2001年製作の映画)
5.0
舞台はベトナム戦争。
米陸軍ウィラード大尉が帯びた特務指令は、軍の命令を無視しカンボジアで現地民を率いて自らの「王国」を作った男、カーツ大佐の暗殺だった。
ウィラード大尉は、彼の王国に潜入するため、哨戒艇に乗り込み、クルー達と共にベトナムのヌン川を遡上する。
カーツ大佐のもとへ近づく度、狂気を増していく地獄の戦場。
その狂気に飲み込まれる中、ウィラード大尉はカーツ大佐に任務以上の興味を惹かれる…

…凄い映画だ。
現代では色々問題有りすぎて、作れなさそうな映像と、その完璧な美しさに度肝を抜かれた。
前半の山場である、キルゴア中佐連隊のシーン。
戦闘ヘリが隊を組んで飛び、ワーグナーを大音量で鳴らしながら、ベトナム人を殺しまくり、そのくせ負傷したベトナム人は保護し、原生林はナパーム弾でとんでもない規模で焼き払い、そんな戦場の中、川でサーフィンする…という混沌。
ロケット弾が川に命中して水しぶきをあげ、虹が出るシーンとか完璧すぎる画で、もはや引くレベル。

そこからは、様々な駐屯地・戦場を経由し、目的地に向かうロードムービー的展開。
戦争スペクタクルとしてはキルゴア中佐連隊がピークなんだけど、そこからの映像も、どれも美しい。
特に、ラスボス・カーツ大佐の登場シーンはカリスマ性ありすぎる。
暗い部屋で、焚かれる火だけを光源に、ハイコントラストな画。
横になっていたカーツ大佐がゆっくりと起き上がるが、顔は闇に紛れて全く見えない、って所が素敵。3部DIOの初期を思い出した。

ストーリーについては、ちょっと難しい。
コッポラ監督って、セリフで状況を語らせたりせずに、映像で見せる感じだし、しかもそれがさり気なかったりするから、私には「ゴッドファーザー」同様、完全に理解するには難しかった。
加えて、哲学的というか観念的な意味のシーンが多く、特にカーツ大佐のセリフはもはやポエムだ。言ってることワケわかんねー!
でも「ゴッドファーザー」と違って、こっちはすげー面白く感じたからよし!

しっかし、ベトナム戦争って、世代じゃないからよく知らないけど、随分いい加減な戦争だったんだな。そのくせ規模が大きい。
映画のような状況は実際にあったのかどうか分からんけど、戦場ではアメリカ人・ベトナム人ともに悲惨だったみたいね。
ベトナム撤退派の大統領が暗殺されたり、ウォーターゲート事件だったり、アメリカ史上トップクラスの闇の深さだ。
この映画が見せる戦場の狂気も、氷山の一角、なのかもしれない。

ジャングルの川が舞台で、自らの王国を作ろうとした男の話で、主演俳優・監督がキチガイで、撮影現場がリアル地獄の黙示録だった、という奇妙なまでに一致するヴェルナー・ヘルツォーク監督の「アギーレ/神の怒り」もオススメ!