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地獄の黙示録・特別完全版のcomaのレビュー・感想・評価

地獄の黙示録・特別完全版(2001年製作の映画)
3.0
右手に見えますのはサーフィン狂のキルゴア中佐、左手上空にはPLAYBOYマークのヘリが見えて参りました…

主人公であるウィラード大尉は、機密任務以外の事象には「傍観者」であり続ける。この戦争の当事者でありながら半歩引いて、この異常な戦況を見守る視点。そういう意味でアトラクション的。
祖国の恋人が‘ ディズニーランドに行ってきたの。あなたものんびり過ごしている?’的なあまりにも脳天気な手紙を寄越してきたのを読んで、「ここにもディズニーランドはあるぜぇ??」とか若い兵士が密林に向かって軽々しく言い放ったのには背筋が寒くなったな。

下流から上流へ。次第に、傍観者だったはずの一行は手を汚さざるを得なくなってゆく。とっくに麻痺しているはずの感情を揺さぶられる。これは何だ?これを戦争と呼んでいいのだろうか?という疑問。そして最終目的地であるカーツ大佐の「王国」へ。


多数のバージョンがあるようですが、こういう作りなら無限に編集できるんだろうな…理解を超えた悲惨な戦闘殺戮シーンの羅列。
理不尽さに眉を顰めていても、キルゴア中佐の「朝のナパームの匂いは格別だ」の迷(名)セリフや、「はらわたが出るまで闘うやつには~」は必聴なんですよね。残酷な笑い。


撮影困難のエピソードは噂に聞いていましたが、そりゃそうでしょう、と言いたくなるようなスケールのでかさ。
好きとか嫌いとかじゃなく、1度は観ておくべきだと思いました。臨場感、迫力という点ではどう考えても凄い。
ラストのカーツ王国は想像以上の場所で、これはやはり必見。


キーワードは「2つの顔」
戦場の妙な高揚感と死への恐怖、欺まんと正義。相反するものによって割かれていく高潔だったはずの(または無邪気な若者たちの)精神。理性を失えば序盤のウィラード大尉のように社会に適応できず、理性を失えない人間はカーツ大佐のように戦場で狂う。
その虚しい2択があの戦場で繰り返されていた…

そんな3時間超え、狂気の淵ぎりぎりを攻めた地獄のジャングル・クルーズ。長いですが、削るには惜しいシーン満載の完全版でした。
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