LalaーMukuーMerry

セント・オブ・ウーマン/夢の香りのLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

4.4
僕の名はチャーリー・シムズ。ボストンの名門ベアード高校の学生。もうすぐ感謝祭の連休で友達はみんなバカンスを計画しているが、僕はバイトで旅費を稼ぐつもりだ。無理してこの学校に来させてくれたオレゴンの親のことを思うと、金持ちのぼんぼんたちと同じようにはとても遊べない。
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感謝祭の週末は子連れで親元にいくという一家で、一人居残りする老人の世話をするバイトを見つけた。行ってみたらアルパチーノそっくりの退役軍人だった。軍隊式に頭ごなしに怒鳴り散らし、とても口が悪くて、怖くて嫌な人だ。名前はフランク・スレード中佐。失明していて自由に歩けないようだから、気を使って腕をとって補助しようとしたら、かえって強く叱られた。とてもやりにくい。依頼人で姪のロッシさんに「面接」は失格だと思いますと言ったのだが、僕しかいないから必ず明日来てと、念を押された。
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しかたなく翌日お宅に行ったら、中佐からいきなりニューヨークに行くから準備を手伝えと言われた。話が違う。タクシーと飛行機を乗り継いでニューヨークに行き、最高級ホテルで週末を過ごすことになった。飛行機の中の中佐はとても上機嫌だった。中佐にはスチュワーデスの香水を当てるという特技があり、女が大好き、下品な話も大好きという一面もあることを知った。話を合わせるのが難しい・・・
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ホテルに着くと、中佐は週末の計画を教えてくれた。
1.中佐の兄の家に行き、久しぶりに兄の家族に会う(感謝祭だもの)
2.女(高級娼婦)を抱く 
3.・・・
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3つ目の計画を聞いた時、冗談だろ!と思ったが、受け流すことにした。豪遊が始まった。高級レストランでの食事、スーツを新調、散髪をして身だしなみを整える。中佐はホテルのラウンジで見知らぬ若い女性に声をかけ、タンゴを踊るという離れ業をやってのけた。しかもメチャクチャ上手。うっとりと見惚れてしまった。中佐はとても不思議な人だ。一体どんな人生を送ってきたのだろう? 僕は傍で付き添いしながら中佐に興味を持ち始めた。
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もちろん2番目の計画については僕が付き添ったのは女のいるホテルの前までだけ。タクシーの中で待っていたら満足そうに中佐がステッキをつきながら歩いて出てきた。前日の1番目の計画がとても酷い結果に終わって落ち込んでいただけに、僕はホッとした。
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(他人に棘のある中佐の態度は、役立たずの自分が情けないという想いの裏返しなんじゃないか。中佐は孤独なんだな。でも同情して付き添いしてたらすぐに見破られて怒鳴られるからこのままで行こう・・・)
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3番目の計画についてはここでは書かない。でもその計画を僕は必死になって辞めさせようとしたとだけ言っておこう。その気持ちが伝わったのか、中佐と僕の間に心のつながりができたのだと思う。だからボストンに帰った後、アッと驚くようなことを中佐はやってのけ、ベアード校の校長から窮地に立たされていた僕を救ってくれたのだ。へそ曲がりの中佐は、借りを返しただけだ、とうそぶくのかもしれない。でも僕を助けることができて中佐はとても上機嫌だったのは確かだ。声をかけに来た女の先生の香水を見事に当ててびっくりさせていたから。