neneco

母べえのnenecoのレビュー・感想・評価

母べえ(2007年製作の映画)
3.8
記録。

『生きている父べえに会いたい。』

観ていてすごく辛くなる。
けど、戦時中の時代を綺麗に儚く美しく、腹立たしく人間らしく映し出される描写は、山田洋次監督の素晴らしさを感じることが出来ると思う。

吉永小百合は勿論のこと、娘はつべえ役の志田未来、良かった。
志田未来は女優になるために生まれてきたっていつも思わされる。

家族の皆に心配をかけないように書かれた父べえの手紙。
父べえに想いを伝えるために書いた手紙の黒塗りにされた部分。
観ていて胸が苦しくなった。

劇中の「戦争はこうでなくっちゃ」という言葉にゾッとした。
戦争は悲しみ、憎しみしか生み出さない。
こんなことはあってはならない、、このような時代があったことを胸に刻みながら、もう二度とあってはならないと深く深く改めて思った。

浅野忠信が演じる山ちゃんの存在に、母べえや娘二人、そして観ている私はどんなに救われたことだろう。
だからこそ、辛かった。

ラストの母べえの言葉にずっとずっと胸にしまっていたんだなと思うと、胸が締め付けられる思いだった。

ずっと会いたかったもの。
ずっと帰りを待っていたんだもの。
ずっと父べえを想っていたんだもの。

そう思って、当たり前じゃないかと思うと同時に、叶わぬ夢に苦しくなった。

最後の父べえのナレーションの言葉に、当時の時代のやるせなさがグッと伝わってきて、私はそれを重くしっかり受け止めた。
neneco

neneco