こたつむり

ロックンローラのこたつむりのレビュー・感想・評価

ロックンローラ(2008年製作の映画)
3.7
♪ 誰かが僕を愛してくれるなら、
  その全ての人を道連れにしたいと
  思ってるんだ。
  ロックンロールの限り無き、
  うねりの中へ。

絡みあった人間関係。
テンポの良い犯罪劇。
着地点が見えないジェットコースター。

さすがはガイ・リッチー監督。
正直なところ、既視感に襲われる展開ですが…役者さんの使い方も含めて、飽きずに観賞できるのは見事な限り。

これをミュージシャンの作品に喩えるならば。
シングル曲満載の大ヒットアルバム…の次に出した地味なアルバム。派手な展開は皆無なんですが、聴けば聴くほどジワリと沁み込んでくるんです。

だから1曲目から最高。
ベースがうねる出だしから始まって、ズンズンとリフを繰り返しながら“ロックンロール”を語っちゃいます。そして、2曲目、3曲目…と見栄えは似ていても魂に響く楽曲が続くのです。

特に本作のキモはトム・ハーディ。
物語的にも感情的にも美味しいポイントを独り占めです。

あと、むさ苦しい犯罪社会に咲く華。
それを担うのはタンディ・ニュートン。ぶっちゃけた話、ちょっと痩せすぎかな…と思うんですが、物語中盤のダンスシーンは最高でした。たぶん、超有名な“犯罪映画”に敬意を示したんでしょうね。そういえば、彼女の髪型も似ているような…。

まあ、そんなわけで。
突き抜けたところはないものの、監督さんの筆致が大好きなら観賞すべき作品。惜しむべくは絶妙なバランスゆえに「どこに足を乗せれば良いのか」と悩んじゃうことでしょうか。その辺りはガイドが欲しかったですね。贅沢な悩みですが。

最後に余談として。
「ロック」はともかく「ロックンロール」と口にすると“ダサく”感じるのは何故でしょうか。これはロックンロールが当初持っていた“反抗的”な部分が失われた…ロックが大衆に浸透したからだと思うんです。

要は「ロックは死んだ」ってことですね。
でも、死んだならば引き継げば良い話。形に拘るんじゃなくて魂が大切なんです。よーし、僕も反抗しよう。遍く全てに反抗しよう。決して“天邪鬼”じゃありません。むきき。
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