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はだしのゲンのRのレビュー・感想・評価

はだしのゲン(1983年製作の映画)
4.7
何ちゅうとんでもない映画や。てか、むかーしむかし見たことあったわ、これ。けど、3つのシーンを除いて全く記憶になかった。こんなに衝撃的な映画やのに。前半は、戦時中の広島に住む中岡一家の、貧しいがピースフルな家庭生活が描かれていく。ゲンとシンジは典型的なヤンチャ坊主で死ぬほどカワイイし、父と母はそれぞれにセクシー、お姉ちゃんは慎ましき美少女。配給の少なさから、妊婦の母が栄養失調になるんやけど、家族と近所の人たちの身にしみるような親切心で見事に回復。大日本バンザイな空気の中、反戦の姿勢を貫いている彼らは(愛のコリーダと同じ演出アリ!)、周囲に非国民扱いされながらも、正義を信じ、慎ましく、仲良く、平穏に暮らしている。そんな日常のなかの、まったく普段と変わらないある日、突然、何の前触れもなく、ピカッ、と世界が光る。すると、見る見る人々の皮膚が、腹わたが、ドロドロに溶けだし、眼球が飛び出して溶け、すべて蒸発して、黒焦げの骨だけになる。そこら中で、学生が、お母さんが、赤ん坊が、次々に消えていく。全ての人に、等しく、あまりにも不条理で無惨な死が降りかかる。そして、すさまじい爆風で、あらゆるモノが瞬く間に破壊され、広島の街が跡形もなく灰燼に帰する。中心地にいたにも関わらず、たまたまの幸運で生き延びたゲンは、原爆でzombieみたいになった群衆の間を駆け抜け、我が家に向かう。そこでは、つぶれた家に下敷きとなった家族を、母が助け出そうとしている! この一連のシーンの衝撃は、比類なきすさまじさであるにも関わらず、ほとんど我が記憶から消えていた。なぜだろう。あまりの恐怖が無意識のうちに記憶を抑圧したのだろうか。そう言えば、なぜか幼い頃、原爆の恐ろしさや戦争の悲惨さを、一時期、心が痛むくらい感じていたことがあったのをおぼえている。それはひょっとしたら、この映画を見たためであるかもしれない。てか、ふつーに何気なく見たら泣いてまう子どももたくさんいると思う。ほんで、話はここから、悲劇につぐ悲劇の果てなき連鎖なんやけど、そのなかに、感動的な人間精神の蘇生のドラマがあり、どれだけ踏みつけられても雑草のように立ち上がる民衆賛歌があり、最後まで決して屈することのないヒューマニズムで貫かれている。だから見終わったあとは、爽やかな高揚感と清々しささえ残るのです。ウソと誤魔化しだらけの、永遠の0点な戦争映画と違って、しっかり戦争という絶対悪を直視してるし、日本軍事政府への批判的立場も明確。地味だけど是非とも多くの人に見てもらいたい傑作! ちなみに、記憶に残っていた3つのシーンとは、ちょいネタバレになるかもやけど、house on fire、オッさんassからbleeding、so much milk a little too lateでした。また見たい!
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