えくそしす島

セルビアン・フィルムのえくそしす島のレビュー・感想・評価

セルビアン・フィルム(2010年製作の映画)
3.4
【禁忌】

これは昔、上映していた時の警告文だ

「本作品には、倫理的にも表現的にも最悪の描写がございます。20歳未満の方には、決してお見せ出来ません。また20歳以上の方であっても、心臓の弱い方や体調の優れない方の、ご鑑賞はお勧めできません。くれぐれもお客様、各自の責任においてご鑑賞下さい。」

監督:スルジャン・スパソイェヴィッチ
脚本:スルディアン・スパソイエヴィッチ、アレクサンダル・ラディヴォイエヴィッチ

あらすじ
伝説的なポルノ男優だったミロシュ(スルジャン・トドロヴィッチ)。すでに引退し妻と子供がいるが、かつての仕事仲間から高額な仕事のオファーが舞い降りる。家族を養う為に受けることになるのだが…。

鬼畜映画の最高峰、衝撃的な問題作、常軌を逸した作品、世界数十ヵ国以上で上映禁止、これらの謳い文句で括られる多くの作品群。しかし、作品によって

“何が、何に“

接触するかで意味合いは大きく変わる。ただショッキングな表現なのか、人体損壊等のグロゴアな描写なのか、トーチャーポルノ(拷問+性的興奮)的な問題なのか。

今作は映画的に未熟な部分も多く、恐らくこの類の作品をよく観る人には恐怖感は薄い。グロゴアも凡百、ポルノもエロティシズム皆無だ。
ならば、何故この作品がこれほどまでに名前が上がり、世界各国で問題となってきたのか。それはたった3文字で表現できる。

「倫理観」

この3文字の表現をぶち壊しただけで、こんなもの上映出来るかボケー!となる。更にはボカシの有無でも作品のインパクトが大きく変わる。

これは怖さを堪能する映画ではなく、手を振り首を振りながら、コレハタメタヨーセッタイコレハタメタヨー、となる狂気の世界だ。常識としての倫理観をこの作品はブブカの棒高跳び並に飛び越えてしまった。

今作に出てくる色々なパワーワード
"バルカン半島の性の神"
“ポルノ界のニコラ・テスラ"

最初、これはコメディか!と思った描写も多く、序、中盤が長すぎる!とも、音楽が過剰だ!とも思ったが、次第に制作者の本気度が見えてくる。

世間では鬼畜な“だけ"のイメージだが、実は映画を通し、セルビアの世情や現状に対する国民のメタファーだと監督が訴える社会派としての側面と、単に過激な作品では終わらない物語がある。

そこには欲に抗う心理的な葛藤と自我があり、起承1に対して転3結4と後半に“凡ゆるモノ"を巻き込む怒涛のブーストがかかりラストまで突き抜ける。

見慣れ過ぎて“真っ黒“な私だと、世間一般の意見と乖離している可能性があるかも知れない。いや、ある。

ここで、鑑賞時に居た“真っ白"な温厚且つ温和を絵に描いたような女性が発した、視聴後の第一声を紹介しよう。

「なんてものみせてくれてんだてめえ」

現場からは以上であります。