垂直落下式サミング

フレディVSジェイソンの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

フレディVSジェイソン(2003年製作の映画)
4.8
惨劇から10年後、エルム街の住民は今や殆どフレディ・クルーガーの存在を忘れ去っていた。恐怖の力を得られなくなったことに危機を感じたフレディは、現実世界の殺人鬼ジェイソン・ボーヒーズの夢を操り、エルム街に惨劇を起こすよう仕向けることで、再び恐怖を伝播させ悪夢復活を果たす。しかし、ジェイソンはフレディのコントロールから易々と離れ、フレディの獲物を横取りするように大殺戮を始めてしまう。恐怖の殺人鬼はふたり要らない。二大ホラーキャラクターが激突するクロスオーバー作品。
本作は、『エルム街の悪夢』シリーズの第八作目かつ、『十三日の金曜日』シリーズの第十一作目にあたる。
ドラマの部分は類型的だが、人気者の千両役者であるフレディとジェイソンをおなじ土俵に立たせることを目的としたVSものとして、下手な新解釈を入れず、興業的に割り切って作っている潔さに惚れた。
中盤、仲間が集まってジェイソンとフレディの関連について推測するときに、ストーリーの設定そのものを声に出して喋っているような察しの良すぎるセリフがあるが、二つの映画の世界が交わっていることそれ事態にワクワクさせられるため、説明的ではあるが嫌味には感じない。
設定を箇条書きにして重要点をモジュール的に繋げたような脚本だが、なぜふたりが戦うのか、どうしてそのような選択をしたのか、一応は納得させられる理屈があり、それが無理なく筋が通っていたと思う。
本作で、ジェイソンは溺れ死んだから水が弱点で、フレディは焼け死んだから火が弱点と、ふたりのタイプ相性が説明される。エルム街からクリスタルレイクに小一時間ほどで移動、そして地の利を得ることで戦局がかわってゆくのも面白い。
スター対決のお約束、両者リングアウトは意見の別れる結末ではあるけど、夢を壊さないための引き分けだと好意的に受け止めたい。むしろ、どっちが強いとかで作品ファン同士の対立を生んだりしない平和的な解決だと思う。
80年代ホラーへの愛に溢れたやさしい対決をみせてもらった。ニューラインシネマは名マッチメイカーだ。数あるVS系映画のなかでも、最も両者の擦り合わせがうまくいったものなんじゃなかろうか。夢に満ちた素敵な一作。

『十三日の金曜日』が11本と『エルム街悪夢』8本に本作を入れて20本、ひとつ90分と仮定すると90分×20本=1800分なので30時間です。一日ちょいで観終われますね。お手軽!