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酒とバラの日々のBOBのレビュー・感想・評価

酒とバラの日々(1962年製作の映画)
4.0
『ティファニーで朝食を』のブレイク・エドワーズ監督によるアル中映画の名作。

"The world looks so dirty to me when I'm not drinking."

男と女と酒(とバラ)。酒に溺れていく夫婦の美しく残酷なドラマ。アルコール依存と夫婦愛が足を引っ張り合い、負のスパイラルから抜け出せないという点が恐ろしい。主演二人の演技含め、リアルに再現されたアル中描写が強烈だった。

ジャック・レモンが主演ということもあり、ビリー・ワイルダー味をどことなく感じる。『アパートの鍵貸します』(社会風刺恋愛ドラマ)×『失われた週末』(シリアスアル中ドラマ)のようなイメージ。『ティファニーで朝食を』"Moonriver"♪から連続でタッグを組んだ、ヘンリー・マンシーニの音楽が涙を誘う。

ドラマチックな夫婦愛。夫婦として、人生の喜びも悲しみも共有したいという想いから、アルコール生活を始め、酒の切れ目が縁の切れ目となっていくのは儚く虚しい。酒に溺れる愛する妻に泣く泣く酒を注ぐ夫の姿は、見ていて居たたまれなくなった。

ジャック・レモンとリー・レミック(『オーメン』)のアル中演技が、恐ろしい。ジャック・レモンは酒瓶を求めてビニールハウス🌹で暴れ回るシーンと、拘束ジャケットのシーン、リー・レミックはモーテルで酒を乱れ飲むシーンが、脳裏に焼き付いて離れない。

資本主義社会への風刺。大企業主催のイベントに美女を手配する人材派遣会社で働く夫、夫の単身赴任によりワンオペ育児を強制させられる妻。仕事のストレスを紛らわせるための酒、独りの寂しさを紛らわせるための酒が、アル中転落人生に繋がったという側面もある。

アル中映画の系譜。元祖中毒映画の『失われた週末』も名作だが、夫婦を運命共同体としてドラマチックに描いた本作の方が、個人的には好き。本作の男女逆転版が『リービング・ラスベガス』と言えるかもしれない。時代性ということもあるだろう。

Tips。アル中患者は、自分がアル中だと認めない。これはアル中ではなく酒を飲み過ぎただけであり、意志さえ強く持てば、自力で解決できると思い込んでいる。一度は断酒しても、ほんの一口なら、、という強い誘惑からは逃れられない。

ゴキブリスプレーを巡ってアパート住民が大騒ぎ。

「本当に愛しているなら、助けてやれ。」

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