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シェルタリング・スカイのmayaのレビュー・感想・評価

シェルタリング・スカイ(1990年製作の映画)
3.0
モロッコを旅行して、都市から砂漠へ抜ける、殆ど同じようなルートを辿ったのだが、アトラス越えの景色、突然アラブ語の人達に囲まれて謎のアフリカ市場につれてかれて置き去りにされる(後から知ったけど田舎ではSA的な扱いらしい)、スイカ、肉、赤土に無造作に散らばる墓地など、モロッコ旅行を結構リアルに描いている。あの蛇笛と太鼓の音、まじで帰国後も夢に出ます。
観終わった後にベルトルッチの撮るエロティシズムに妙な気持ち悪さを感じて調べたら、案の定女優の扱い方において古い芸術家が肯定してきた最悪の「芸術における性的搾取」をしていて、残念だった。西洋のオリエンタリズム批判でよくアラブ人の前で白い裸を晒す白人女性を描く「奴隷市場」が出てくるが、まさにその精神でしょ。レイシズムとミソジニーと性的搾取の3段構え、負の遺産でしかない。
映像は素晴らしい、物語も詩的で皮肉っぽくて美しい、でも観た後の気持ち悪さの原因は、この映画、ひいてはベルトルッチが語る「愛と芸術」が旧世代の搾取の価値観の上にしか成り立たないことを意味している。本当に残念だけど、この映画を「好き」というわけにいかないし、まだ今より学が浅かった頃イタリアで「ベルトルッチがすき!」と言ったらイタリアのテレビマンが不快そうに押し黙ってしまった意味が漸くわかってしまった。私はラストエンペラーが大好きだったのに。
ちなみに、唯一わりと気持ちよく観れたのはタナーです。タナーは一人で旅してるシーンで、結構根性座ってて、自分がツーリストだろうがトラベラーだろうが「部外者」って弁えてる、一番旅向きの人なんじゃないかと思った。
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