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いつか晴れた日にのRのレビュー・感想・評価

いつか晴れた日に(1995年製作の映画)
4.8
大好きなアンリー監督の名作で、今回はじめて見ましたが、さすがとしか言いようがない! 一見、恋愛至上傾向および王子様妄想傾向の強い女性向けの、男には呑み込みにくい映画のように見せかけて、現代アホ男子が見ても笑ってハラハラ、凹んでワーイ! そしてちょっと考えさせられるめちゃくちゃ面白い映画。19世紀英国の女流文芸作品の世界を、台湾人のおじさんがこんなに見事な映画に作り変えるって、いかにして可能なのか。アンリー監督には文化やジェンダーの垣根がないだろうか。謎でしかないが、きっともっと深い、全人類共通のヒューマニズムにまで思考を掘り下げてるのだろうね。全編軽快でユーモラスな田園風ロマンスって感じなんだけど、ストーリーそのものは極めて悲惨。ダッシュウッド3姉妹の父が死んで、当時は男にしか相続権がなかったので、前妻の息子にほぼ全ての遺産が行き、お金のなくなったダッシュウッド家は、田舎の叔父のコテージに招かれ、そこで質素な暮らしをするようになる。当時、ある程度の階級にいる女性は外で働いてお金を稼ぐということができず、家で縫い物をしながら、結婚相手の男が現れるのを待つのみだった。既婚女性たちはやることがなくて暇すぎるので、他の女たちと他人の噂話ばかりして暮らす、というとんでもない生活。女が自立なんて到底無理、男性に依存して生きるしかなった時代。そんな中、未婚のまま年増で抑制的性格の長女エリノアは、シャイな善人エドワードといい関係になるも、お互い遠く離れてしまって音信不通に。女盛りの自由奔放な次女マリアンヌはイケメンチャラ男ドクターと恋に落ちるも、結局ドクターは金のある女の方に行ってしまう。いちばん下の娘はまだ幼女なのでいいとして、果たして上二人は素敵な旦那様を見つけて結婚することができるのか⁈ というまぁ現代ではちょっと考えられない生きづらさのなか生きてる女たちを描いている。もちろんその時代なりの枠組みに沿ったエンタテインメントとして、彼女たちと一緒にドキドキして楽しめる面も大いにあるのだが、現代に生きる我々としては、やはりそれだけで本作を見ることはできないのであります。いろいろな観点があるだろうが、個人的には、こういう社会では女同士が本当の意味で仲良くなるのが難しいよな、と思ってしまう。サバイバルの手段が「男によって選ばれる」ってことに限定されると、自分以外の女たちがみんなライバルになり、敵になり、羨望や嫉妬の対象になり、女同士の結束が不可能だ。女が完全に自立して自分だけで食っていけるならば、男がいてもいいし、いなくてもいい、そして、逆に自分が主体的に男を選ぶ、という立場も得られる。そう考えると、未だ日本における男女関係はこの時代の英国とさほど変わってないんだろーなと思うところがいろいろあるし、意識的にか無意識的にか男たちが女にコントロールを奪われないような社会を維持しているのではないか、とすら考えさせられる。さすがにこの映画を見てそこまで考えると行きすぎなのかもしれない。でもそう見えちゃうんだもん。マリアンヌは比較的モダンなガールではあるんやけどね。主人公姉妹以外があまりに不和な感じなんで気になっちゃう。まぁええねん、そんなことは忘れて、素敵な男性に選んでもらえるよう、彼女たちを応援しようではないか。何よりスター俳優たちの存在感が素晴らしい。エマトンプソンの最後まで抑えていた感情が堰を切る名演技。ケイトウィンスレットの若き奔放なエネルギー。ヒューグラントのガチガチシャイネスと人の良さ。ディープなる想いと声質のアランリックマン。悲惨なグッドマザー、ジェマジョーンズ、などなどホント皆さま素晴らしい。そして映像と音楽の明るくてキレイなこと! ヘビーなシーンもあるにはあるが、最後はとってもハッピーな気持ち。いやー、これは、いつ誰が見ても、大いに喜べる、最高な映画なのではないでしょうか。ちなみに原作者ジェーンオースティンは大変に好きな作家のひとりなのだが、映画化作品ぜんぜん見てないので、ちょっくら見てみよーかなー。もしどなたかオススメ作品があれば、是非ともお教えくださいませ。
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