レインウォッチャー

ヘル・レイザーのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

ヘル・レイザー(1987年製作の映画)
3.5
一度見たら忘れないキャラのインパクト、勝手にこのピンヘッドさんと魔界大戦を繰り広げる映画だと思っていたのだけれど、どっこいメインはややこしい家族内抗争の話だった。ええ…民事でやってくれ。地獄を巻き込むなし。

さて一口に「怖い」「グロい」と言っても、恐怖の源泉を細分化していけばその範囲はごく広く深い。そこのところ、今作はめちゃくちゃ欲張りにカバーしている。

暗闇や異形の存在に対する根源的な恐怖、痛みや肉体の変化といった物理的な恐怖、精神的に追い詰められる恐怖、虫や小動物や汚物に対する生理的な嫌悪、さらにはいわゆる「ヒトコワ」要素まで。

これらがどれも執拗で緻密なヴィジュアルで畳みかけられ、まるでホラー史のテーマパークのようだ。
そもそも「horror」という語はラテン語の「horror(恐ろしいもの、戦慄)」に語源をもつという。つまり、古来からずっと引き継がれてきた語なわけで、人間にとって恐怖が真に普遍的な感情・概念だったことが窺える。それも踏まえて、今作はとてもピュアで高密度のホラー映画といえるだろう。

ちょっと物足りなかったのは、せっかくこんなにキレキレなデザインのピンヘッドさんたち4人の魔導士が、ほとんどお化け屋敷としてしか機能していないことである。
それぞれどんな特技があるんだろう?とか期待していたのだけれど…そのへんが描かれるのは『2』以降なのだろうか。

わたしのお気に入りは、歯が常にむき出しでカタカタ言っているチャタラーさんだ。ほかの魔導士が意外にも理知的で「話せる」奴らなのに、彼はカタカタしか言えないところが不器用カワイイ。

もしかして、ピンヘッドさんには彼が何を言いたいかわかるのだろうか。だとすると、世界のどこかにはピン×チャタ同人誌とかあったりするのか。ここにまた、新たな恐怖の可能性に気付いてしまったかもしれない。