カニパン食べたい

ザ・ミッション 非情の掟のカニパン食べたいのレビュー・感想・評価

ザ・ミッション 非情の掟(1999年製作の映画)
5.0
今の私は週末にジョニー・トー作品を観ることを楽しみに平日を一生懸命に過ごしているのだ。始まりの方は結構かなり退屈でBGMも単調でイライラするし、やっぱこの時代の雰囲気が私には合わないやと思ったんだけど、ぐっと面白くなってくるのは夜のプールのシーンから。紙くずサッカーのとことか、こういうのがたまらないです。ジャスコの銃撃戦とか退屈の極みだったBGMがカツンと効く瞬間があったりとか、とかとか、あと役者たちの粒ぞろいなノワール的格好良さはなんなのですか。熱すぎる。面白すぎた。よくよく観ていると俳優のちょっとした仕草にもなぜそうしたかの根拠があったりするリアルさがあったりして、物語に奥行きを感じさせてくれていい。
こんなスタイリッシュなのを撮るのに『柔道龍虎房』みたいな外連味しかない映画も撮るのね。

さっき数日ぶりに2回目を観たばかりだけどやっぱり良すぎてTSUTAYAに絶対に返したくない。以下ネタバレ




興奮は褪せないどころか2回目だからこそ新たな発見と気づきがあってどうやったらTSUTAYAに返さずにすむのか悩ましいんだけど、今回おっとなったのがヒットマンとの最後の銃撃戦。
最初の襲撃の時に撃ち合った二人が、決着をつけるかのように 1on1のストイックな撃ち合いをするのがたまらなくいい、ライフルで狙撃されているのに弾が頭部をかすめようとも淡々と拳銃で弾を打ち込み続ける超絶かっこいいマイク vs ロイとグヮイに王手をかけられても狙撃に集中し続けるヒットマン、それぞれのタフ&クールな仕事人っぷりに痺れるしその二人が銃撃戦後に初めて顔を合わせた時に互いに「お前か」みたいなリスペクト溢れる視線を交わすのがまたいいんだよね、私情を捨てて命のやりとりをした二人だからこそ感じ合うものがあるのだろう、と一緒に観てくれた夫に早口で解説した。ロイとグヮイが王手をかけたヒットマンを撃たなかったのもある種のリスペクト、仕事人として共感しあうものがあるからなのだろうし、だのに、殺せの命令から数秒後には躊躇なく撃ち殺して、次のシーンでは飯食って乾杯しているドライさがもうこれぞノワールって感じで痺れちゃうと夫に早口で説明した。
ところであのプールサイドの花火タバコ、あの仕掛けの事をグヮイ演じたアンソオニーウォンは本当に知らなかったんじゃないかしら。かなりリプレイしたけどみんな本当にいい笑い方してるんだよなぁ。
ところでレビューサイトを徘徊してもあまり言及されていない事で、姐さんを殺す命令を下したのは誰? フェイも姐さんが殺されるまでは想定していなかった様子なので姐さんに関しては掟で自動的に消されるシステムではないんだろうと思うけど、だとすると命令を下したのは事態を知ったブン親分なのかな。
最初の襲撃後に「面目無いッスしょぼん」となってる皆んなにブンさんが自らお茶をふるまい労いつつの「お前たちに非はない」と言えるのは弟にくらべ温厚な人格もありつつの、組織を背負ってきた覚悟 & 年を重ね角がとれた枯れオジの度量があってこそ。フェイもその度量にすがろうとしたんだよね。その男が、非戦闘員の愛妻であっても事をしでかせば始末をつけさせる冷徹な一面を顕にしたのがあの場面だとすると、あの時にフェイが感じた「掟」の重み厳格さがよりいっそう際立って感じられますよね。あとグヮイがシンを始末するための銃をフェイに発注かけた時、シンに連絡するのにあえてフェイの携帯を使ったのは…………って語り出したら止まらない自分がキモい。