継

ザ・ミッション 非情の掟の継のレビュー・感想・評価

ザ・ミッション 非情の掟(1999年製作の映画)
5.0
組織に召集された5人の男。
与えられたミッションは護衛としてチームを組んでボスを守り、敵を割り出し、倒す事。

だが、寄せ集めの5人が最初から一枚岩になれるハズもなく、護衛開始後の最初の襲撃でその統率の無さを露呈する。ボスは銃撃され、リーダー格のグヮイと新参のロイは衝突してしまうのだ... 。

脚本の無い現場で、演者は約束事を幾つか決めただけの即興芝居を求められる、ジョニー・トー作品。
キャラ設定すら演者任せの中、恐らくは衝突する二人の関係性から互いのキャラを作り出していったのであろう、物静かでクールなグヮイとギラついたナイフの様なロイの「静と動」の対比がいい。

衝突から和解し共闘するパターンは、映画のみならずマンガ、ゲームでも見られる友情や絆を描く上での常套手段だとは思う。
それでも本作が巧いなと思うのは、二人の和解を僅(わず)かな会話と煙草に火を着けてやり、杯を交わすだけの最小限の演出で表現しきった事と、
その流れをちょっとした悪戯で(火薬を詰めた煙草。あるタイミングで先端から火花が出る仕掛け) 笑いに変えてオチをつけた転調の鮮やかさにある。
和解した二人とそれを見守る三人。かつて銃を向けあったプールサイドで笑い合う、彼等に芽生えた絆を観る者は感じずにいられないのだ。

Netflix『あくなき挑戦 ジョニー・トーが見た映画の世界』で、本作はオフィスの賃料やスタッフの給料が払えない程の最悪な状態の中で撮られたと紹介される。
予算が足りず途中でフィルムを買う金が尽きてしまい、NGパート以外は全て使わなければならなかったというから驚く。

まぁ話半分としてもww、 低予算なのは一目瞭然なわけで、こうした切羽詰まった環境と上述の独特な撮影手法が本作特有のギラついたスリルとヒリヒリするテンションを湛(たた)える要因になっているのは間違いない。

アドリブの演技で跳ねていく現場。
約束事を “コード” とすれば、演者の能力でカットを重ね白熱していく様はさながらビバップのようで、そう考えるとあのチープなテーマ曲さえ肯定出来てしまう(笑)自分がいる。
それまで沈黙を守ってきたフェイ(ラム・シュー、大好きだ) が、終盤のタクシーで観せるアドリブ・ソロなんてサイコーじゃないか!

確かに最初と最後の要らないナレーション等、本作には明らかな欠点がある。
けれど、それを補って余りある魅力を存分に感じるから、敢えて満点。
興味がある方、機会があったら是非。
継