モモモ

男はつらいよ 寅次郎紅の花のモモモのレビュー・感想・評価

4.0
今となっては「おかえり寅さん」が存在するし特別編である次作もあるがこれが渥美さん最後の「男はつらいよ」であり実質的な完結編だった…と思いながら観ると胸に来る物があった。
前作の出来事がまるで無駄だったかの様な「初恋の人がやっぱり忘れられねえ!」な満男にはどうかと思ったが「結婚式当日になって破談を目論み滅茶苦茶にするだけしたら消えてしまう」という迷惑男振りが「お前こそが車寅次郎の継承者だ!!!」とよくわからない感動を覚えたのも確かです。
飛び出すリリーを追い掛けず間接的な告白は冗談だとはぐらかしてしまう。そんな男が遂に逃げずに一人の女と向き合う成長の物語なのだから本作は「どうしようもない恋愛をする男」の完結編にふさわしいでは無いだろうか。
「帰るべき家」が遂に柴又では無くなった物語…とも読み取れるだろう。だがそれは「おかえり寅さん」が作られていなければの話しだ。
僕が本作をリアルタイムで鑑賞出来ていたら「きっとリリーの元に又フラッと戻ったのだろう」「満男も初恋の人と結ばれたのだろう」とハッピーエンドを夢想出来たのに…今ではそんな事は出来ない。
あれから寅さんは柴又にも現れなくなり、リリーの元にも帰らず、作中で言及はされないが渡世人暮らしの旅の中で一人死んでしまったのだろう。
本作の柴又での最後の件が「兄妹の物語」に立ち返っていて本当に良かった。そこに僕は完結編(では無いのだが)としての意義と価値を感じる。
「母」としての側面が強くなったさくらが「妹」としての我が儘を、心の底からの想いを兄にぶつける。それに応える様にリリーを追いかける寅さん。
兄妹の物語で始まった「男はつらいよ」の円環が閉じた瞬間だと思う。
と、今更「男はつらいよ」にハマった僕を熱くさせる本作だったが…地味に冒頭での震災のシーンどうやって撮ったのか1番気になって仕方がないですね…。合成にしては高度過ぎると思うし、1から撮ったにしてはクオリティが…メイキング本を漁るしかないか…。
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