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D.I.のsonozyのレビュー・感想・評価

D.I.(2001年製作の映画)
4.0
イスラエル・ナザレに生まれたエリア・スレイマン監督による、パレスチナ問題をブラックなユーモアを交えて描いた作品。英語版にて。

カンヌ映画祭: 審査員賞及び国際映画批評家連盟賞
ヨーロッパ映画賞: 最優秀外国語映画賞

プレゼントを背負ったサンタ衣装の男を追う悪ガキたち。
バス停に立ち続けている男と、バスは来ないと告げにくる男。
屋根に空き瓶を大量に運び、近所の小さな坂道を破壊し、警官に瓶を投げつけ連行される凶暴なオッサン。
ゴミ袋をいつも隣家の家に投げ込む男。
空き地のゴミをひたすら集め燃やす女。
といったヤバめな人々に混じり、悩ましい表情で手紙を読み、家の物を査定させ、経営していた溶接工場も売りに出す男は突然心臓発作で倒れ入院する。彼はエリア・スレイマン演じるE.S.の父だ。

イスラエル・エルサレムに暮らすE.S.には恋人がいるが、パレスチナ自治区・ラマッラーに暮らす彼女はエルサレムに入ることができないため、2人は互いの車で検問所のそばの空き地で落ち合い、E.S.の車の中で手を握り合うだけのデートしか出来ない。(手の愛撫だけでエロティックな印象的なシーン)

ある日、E.S.は赤い風船にヤセル・アラファトの顔を描いたもの(ジャケ写)をサンルーフから宙に放つ。
空高く舞い上がった風船に検問所の兵士たちの注意が向いている隙に、2人が乗った車は検問所を通過することに成功。
女はしばしE.S.と暮らすが、近所の事件を見たのを機に去ってしまう。

とある射撃訓練場。コーチの指導のもと、女性が描かれたパネルに向けて射撃を続ける5人の男。
砂が舞う中、パネルに描かれた姿そのものの女性が現れる。なんとE.S.の彼女か?
コーチの指令で彼女に向けて連射する5人の男。ところが、スーパーパワーを持つ忍者のような彼女の反撃が。。
このシーンでは、盾の形がパレスチナの地形だったり、パレスチナ国の国旗モチーフが出てきたりします。

前半には“愛と痛みのクロニクル”、ラストには“父の記憶”というメッセージ。
タイトルは『D.I.(Devine Intervention)』→神の介入/調停による和平はいつ訪れるのか..という監督の思いでしょうか。

セリフも少なめ。好みの作風でした。
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