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バニラ・スカイのよーだ育休準備中のレビュー・感想・評価

バニラ・スカイ(2001年製作の映画)
3.0
端正なルックスと莫大な資産で浮名を流した出版社の若社長David(Tom Cruise)は、自身のバースデーパーティーで初めて本気の恋に落ちる。心を入れ替えると決意した翌朝、交通事故で美しい顔に大怪我を負ってしまい、華やかだった人生が音を立てて崩れ始める。


◆因果応報 身から出た錆

チャラい!を通り越してシンプルに酷い!《女の敵》とはまさに彼の事ではないですか!?僕は男なんであれですけど!!

Davidがまだ幼い頃に飲酒運転の犠牲となってしまった両親。遺されたのは、一代で莫大な富と地位を築いた《父親の王国》。子供一人にはあまりにも広すぎる邸宅と、会社の経営権。白雪姫の《七人の小人》になぞらえた七人の役員と、会社の顧問弁護士。

寂しい過去だったのはわかりますが、成長したDavidの反動が物っっ凄い!女性も社員も友人も気分次第で振り回し放題!《自由》と言えば聞こえはいいけど、《義務》も《責務》も《品格》もあったもんじゃ無い!

夢を捨てて(オーディションをすっぽかして)Davidに尽くしたJulie(Cameron Diaz)をfuck buddyと一刀両断。無言でリムるように縁を断とうとするのはそりゃあマズかろうよ。無理心中を図られるのも身から出たサビですわ。(Julieの入れ込み方も〝異常〟でしたけどね。メンヘラコワイ。)

プレイボーイが恋に落ちて〝今日から心を入れ替える〟なんて発言はわかりやすい死亡フラグ。見事にしっかり回収してしまったわけですね…。


◆禍福は糾える縄の如し

David程の財力も美貌もない《平凡な友人》曰く〝恋の酸っぱさを知ってるから、愛の甘さがわかる。〟

甘やかされて甘ったれて、人生ベリーイージーモードの甘々なDavidには決してわからなかった言葉。散々贅の限りを尽くしてきたDavidが、真実の愛(友人の彼女)を見つけた直後に叩き落される残酷な帳尻合わせ。《酸い》を知っているから今の《甘み》に感謝できるのではなく、《酸い》を知って始めて今までの生活が《甘い》ものだと気付かされる恐ろしい片道切符。

醜く歪んでしまった顔貌にあわせるように、心まで絶望で打ちひしがれて捻くれていく。ゴム製のマスクを装着する理由が《周囲の拒絶反応を緩和する為》と言うのが苦しい。


…親友の彼女に手を出そうとしたバチが当たったんじゃない?(投げやり)


◆バニラ色の空は希望の象徴?

華やかなイケメン社長が、突然マスク姿で殺人の嫌疑をかけられて《分析医》から詰められる。歪んだ顔貌も、不気味なラテックスのマスクも、磨り減って空回る心も、サスペンスを際立たせるスパイスでした。

《バニラ色の空》こそが《母親》を象徴していたし(母親の形見の絵画)、《ビルから飛び降りる》行為が《父親》からの承認を得たいというDavidの願望であった(高所恐怖症であることが父親を苛つかせていた)様に見えます。

何処からが夢で、どういった経緯で眠りについたのか。最終的にはつまびらかにされますが、やっぱり子供時代の満たされない思いがあったんですね。一見バッドエンドですが、Davidの心の奥底につかえていた棘と向き合う事が出来たことは一つ救いだった様に思います。

願わくば、〝Open your eyes〟と共に目覚めたその時が《全てが起こる前》でありますように。《誰もいない朝のタイムズスクエア》の印象的なシーンが、その可能性もある事を示していると信じたい。