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丑三つの村のフラットラインのレビュー・感想・評価

丑三つの村(1983年製作の映画)
3.9
当時はこれで良かったんだろうな、いろんな意味で。

津山三十人殺しをテーマにした作品ということで、実録物好きな私としてはいつかは観ないとな・・・と思っていた所、アマプラで公開されていたことを知り、巣ごもり中に観てやろうかと。
古尾谷雅人さんのイカれた演技は素晴らしい。村にはじかれて孤立していき、最後にはあのような凄惨な事件を起こしてしまう過程が彼の表情から読めていく。戦地へ赴く自分への万歳三唱を独りでやる姿、カメラを睨み付けるようなあの表情に心底震えました。いい役者を失ったんだなと改めて思いました。

極力音楽を廃して演技とカメラワークだけで引きつける手法は、緊張した画に引き込まれる臨場感に溢れていました。昨今の映画と比較すると物足りなさを感じるのですが、この作品のテーマからもしっくりくる演出だったと思います。

濡れ場が結構えぐいですね。こんなガッツリとした濡れ場は今では無理だなぁ。池波志乃さんや五月みどりさんの体当たりの演技は、昭和の古き良き時代だから為し得たものでしょう。田中美佐子さんも大場久美子さんも若いなぁ。清純な中にあるエロスが地味な画からも滲み出てくる様でした。古い映画を観る愉しみ・・・にしてはいかんか(^^;

僕は田舎に住んでいるもので、地域の闇の部分を描いた本作の恐ろしさは痛いほど伝わってきます。村という住むものにとって巨大で卑屈な化け物は本当に恐ろしいものです。昭和の終わりに近づいたこの時期ならば、この作品を映画館で観た世代の大人達は同じプロトコルをもって観たんじゃないかな。

映画あるあるなのですが、ツギオが使っていた銃は散弾銃だからああいう小さな傷にはなりません。もっと大きな穴が開きますし、畳4、5枚を貫通させる威力はないです。それが気になっちゃったのはご愛敬。

creepynuts の「トレンチコートマフィア」の「クソババァ、夜這いにきたでまるで丑三つの村」はこれだったのね。知らなかった。
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