みおこし

暗黒街の顔役のみおこしのレビュー・感想・評価

暗黒街の顔役(1932年製作の映画)
3.7
本題に入る前に…。朝からオリヴィア・デ・ハヴィランドの訃報が飛び込んできて、いつかこの日が来ることは分かっていたはずなのにどうしようもなく寂しい気持ちでいっぱいです。私の映画好きのきっかけは『風と共に去りぬ』であってまさに人生を変えてくれた映画。クラシック映画の魅力を教えてくれたのも本作に出演しているヴィヴィアン・リーやオリヴィアあってこそでした。104歳での大往生、改めて激動の映画史を駆け抜けてきた彼女の人生を振り返りながら感謝の思いでいっぱいです。また改めて、別の作品で彼女について語りたいと思います。

ということで同じく1930年代に人気を博した寡作の名優ポール・ムニ主演の傑作ギャング映画をレビュー(無理やり繋げすぎですみません!笑)。言わずもがな、後にデ・パルマ監督がアル・パチーノを主演に迎えて撮影した『スカーフェイス』のオリジナル版になります。
想像以上にオリジナルに忠実にデ・パルマ監督は撮影したんだなと思うとともに、それほどオリジナル版が優れているということも再認識。時代を感じさせない怒涛の展開、主人公トニー・カモンテの野心と狂気に満ち溢れた人柄の描き方、そして今観るとかなりショッキングな殺人シーン…。どれをとっても素晴らしかったです!ヘイズ・コードのギリギリ施行前だからか、女性の描写ひとつとっても結構過激(しかも女優さんノーブラだし…)で不思議な感覚になりました。先日『民衆の敵』のレビューをした時もそうだけれど、本当にこの時代に街中をアル・カポネたちが闊歩していたと思うとより本作がいかに真に迫った内容かが分かりますね…。

パチーノ版もトニーの極悪なのにどこか人間臭さが漂うところが魅力的でしたが、ポール・ムニも本当に圧巻の怪演。視線の投げかけ方ひとつとっても、次に何をしでかすか分からない彼の怖さが感じられたし、妹に対してシスコンとも取れる異常な愛情を抱いてしまう危うさにもハラハラ。パチーノ版以上にこの妹への執着ぶりが色濃く描かれていて、ギャング映画であること以上に、人間ドラマとしても楽しめました。
そしてどのシーンもさすがのハワード・ホークス節がさく裂。とにかく秀逸!人が死ぬシーンは直接映していないのにトニーの残虐さが伝わってくる強烈な仕掛けの連続だし、リメイク版でも有名な”The World Is Yours”のシーンのカッコよさと言ったらもう…。ラストの電光掲示板、胸が締め付けられました。
やはりクラシック映画は本当に面白い!!
みおこし

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