のうこ

切られたパンにののうこのレビュー・感想・評価

切られたパンに(1968年製作の映画)
3.5
恋人の元から突然姿を消し、街中で野垂れ死んだ男のことを、そうとも知らずにひたすら思い続ける女の話。
現在はモノクロ、過去はカラーになっており、二人の楽しかった思い出が街の中のあらゆる場所で挿入されていく。楽しかった思い出のみしか出てこず、回想というよりもショットの断片を切り貼りしているだけな感じなので、いたるところでカットつなぎが破綻しており、さらに、時間の流れを遮るように部屋の置物や、周囲にいる無関係の人々の不必要なアップのカットが頻繁に挿入される。なんだか人の記憶に直に触れているような生々しさがある。
楽しかった思い出が繰り返されるハッピー映画な反面、過去の思い出だけに必死にしがみつこうとする妄執的な歪んだ精神が編集に見え隠れするスバラシイ映画。
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