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アイアン・イーグルのtakのレビュー・感想・評価

アイアン・イーグル(1985年製作の映画)
2.0
この映画で、クィーンの One Vision が使用されており、メンバーがその使用に対して怒ったという話を聞いているので、どんな使われ方しているのか興味があった。公開当時に観ていたら、見どころの空中戦ドッグファイト(イスラエル軍の協力による撮影だとか)をきっとそれなりに楽しんでいたかもしれない。米英によるイラク攻撃が行われた2003年に観た。ちょっと考え込んでしまうよなぁ、正直。

ヨーロッパの米軍基地に住むティーンエイジャーが主人公。パイロットである彼の父親が中東某国機に撃墜され、捕虜となった。3日後に処刑されることを聞いた彼は同じ基地にいる大佐(ルイス・ゴセットJr.)と共に父親救出に乗り出す、というお話。

主人公は、フライトシミュレーターを本職のパイロット以上にこなす腕前の持ち主という設定なのだが、これが次々にミグを撃ち落とす様には呆れてしまう。トム・クルーズでさえそれなりに苦労していたのに!(笑)。かつてリチャード・ギアを泣かせた鬼軍曹もすぐ引っ込んでしまう大活躍。都合がいいにも程がある。おまけに物語上でも、危機にも陥らず、挫折知らずの主人公。成長物語としての面白さなど、この映画には皆無。おかげで筋に起伏がないし、米軍のもつ機体や武器や大佐の戦術が優れていることを強調するだけ。あんまりだ。

国境侵犯をするような救出作戦が、実際に行われているのかは知らない。それでも装備や物量で圧倒的なアメリカだったからこそ、救出できた物語であることは間違いない。公開当時米国のティーンはこれを観て、「俺たちの国ってすげえよな。彼のようにヒーローにもなれる。俺たちはそんな偉大な国に住んでいるんだ!」とでも思ったのだろうね。そんな錯覚に陥った者は少なくないと思うのだ。

この映画でそんな”特権的国民”の夢を見た若者達は、まさにイラク攻撃にも関わっているに違いない。彼らが異国を見下さないことを祈る他はない。映画自体に罪はないと思いたいけれど、こういう好戦的な映画を撮り続ける限り、異文化を持つ人々との理解はますます遠ざかってしまう。そのことにまだアメリカは気づかないのかねぇ?。

そして、2003年にアメリカは、80年代の反ソビエト映画「若き勇者たち」の名を付けた作戦をイラクで遂行し、捕虜のイスラム教徒にヘヴィーメタルを聴かせる拷問を行った。文化を軍事利用することに怒りを覚えた。
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