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隣る人の小のレビュー・感想・評価

隣る人(2011年製作の映画)
4.2
終盤、ある人の涙を見て、その理由を想像し、なるほどこれは“隣る人”のドキュメンタリーだと思った。

埼玉県の児童養護施設「光の子どもの家」は、親と一緒に暮らせない子どもたちと、保育士が親代わりとなって一緒に生活し、可能な限り普通の暮らしを実践することに取り組んでいる。

施設に預けられる子供たちは皆、狂おしいまでに愛情に飢えていて、親代わりの保育士たちへの甘え方が凄い。まるでこれまで与えられてこなかった分の愛情を取り返そうとしているかのようだ。

そんな子どもたちだからかもしれないけれど、保育士たちの対応は、私が娘にやってきたことと同じ。ぎゅうぎゅう抱きしめ「どんなときでも大好き」と言葉で伝えること。

私と違って保育士たちは、そうするように教えられているのかもしれないけれど、たとえ親からでなくとも、誰かに承認してもらうということが子どもには是非とも必要なことなのだ、と私は信じている。

育児や教育に正解はなく、私の娘がどうなるかわからないけれど、私はそう信じている。だからこの施設の子どもたちは幸せで、ここでの経験はきっと彼らの人生の支えになるだろうと信じている。

一方、子ども達を育てる側はどうなのか。親の場合、子どもたちを承認することで親としての自分も承認しているのだと思う。子どもたちと一緒に笑って、怒って、悲しんで、子どもたちとでなければ体験できないことを体験して、人生を与えてもらっている。

お互いを承認し合うのに、親子の関係なら遠慮はいらない。しかし、親ではなく、親代わりで、できることなら親と子どもを一緒暮らせるようにするのが役割の“隣る人”は子どもからの承認を、素直に、思う存分受け止めることができない複雑な思いがあるのではないかと思う。

親が子どもを承認するのに涙はいらない。子どもに承認された親は嬉し涙は流すかもしれない。しかし、“隣る人”の涙は子どもの承認を受け止めきれない悲しみも入り混じっているのではないだろうか。

やがて子どもたちは施設を離れ、新たな居場所を見つけるだろう。親ならばいつまでもお世話やお節介を焼き続けることができるけれど、願わくば大人になった子どもたちが、“隣る人”を忘れずに連絡をとったり、会いに行ったりして欲しい。子どもたちがそうしてくれたとき、“隣る人”は自らを心から承認できるのではないだろうか。

●物語(50%×4.5):2.25
・子どもよりも大人に焦点が当たっているように感じられたのが良かったかな。続きが見たいかも。

●演技、演出(30%×4.0):1.20
・8年間密着しただけあって、ナカナカのシーンが詰まっている感じ。

●画、音、音楽(20%×3.5):0.70
・普通かな。撮影に『アヒルの子』の小野さやか監督の名前を見つけて、ちょっとだけおおっと思った。
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