こたつむり

天使にラブ・ソングを…のこたつむりのレビュー・感想・評価

天使にラブ・ソングを…(1992年製作の映画)
4.2
響き渡る愛の唄。

今更ながらに初鑑賞でした。
なるほど。名作と呼ばれる所以が骨の髄まで納得できる作品でした。

だけど、この感覚を言葉にするのは難しいですね。
何しろ本作の良さは“理屈”じゃないのです。テンポが良い、キャラクタが良い、物語が良い、音楽が良い…と褒め称えることも出来ますが、それだけでは言葉が足りない気がするのですよ。

例えば、これがヒーロー映画ならば。
大なり小なり“カタルシス”が存在します。
そして、そのためには敗北寸前まで追い詰められ、屈辱に塗れることもあるでしょう。物語を盛り上げるためには、どのような形でも一度“落とす”ことが必要なのです。

しかし、本作には“落とす”表現がありません。
それでいてクライマックスに至ると“ググッと”盛り上がり、思わず「おふ」と喉の奥から声が漏れ、土嚢袋がいくつあっても足りないくらいに涙腺が崩壊し、鹿威しのように首は揺れ「ええわあ、ええわあ」と呟いてしまうのです。

あ。わかりました。
本作が素晴らしいのは。
きっと“愛”が本作に満ちているから。

って、スミマセン。僕に似つかわしくない言葉ですね。「このスットコドッコイのコンコンチキが何を言っているのか」と。うん。言われても当然ですが、それが結論だから仕方がないのです。永瀬正敏兄さんも言っていましたよ。「愛だろ、愛」って。

でも、これってある意味で。
キリスト教の到達点。無償の愛ですよ。
物語を傷つけず、陥れず、盛り上げる存在。
ラーヴ、ラーヴ、ラーヴ。

しかも、それでいて俗世を忘れていませんからね。
例えば、修道院長が寄付金の多寡で態度を変える場面。捉え方によっては宗教にあるまじき姿勢なのですが、現実を考えれば目を逸らせない部分。本作がファンタジィだとしても、物語を構成するために必要な“説得力”なのです。

まあ、そんなわけで。
僕が何を語ろうとも本作が名作であることは間違いなし。難しいことを考えずに楽しめば良いのでしょう。ちなみに個人的な名場面は、ウーピー・ゴールドバーグ演じる《デロリス》がお尻を振るところ。アレに本作の魅力が凝縮されていると感じました。
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