うべどうろ

アイリスのうべどうろのレビュー・感想・評価

アイリス(2001年製作の映画)
2.9
アルツハイマーを患った老夫婦の話。多感だった青年期の記憶を、高齢となった現在と対比的に描くことで、二人の人生の多重性を感じさせようとするととともに、原作の筆者である夫の感情(あるいは心の奥底)をわかりやすく伝えようとする作品なのだろう。

うーん、でも、正直残念ながら、90分という短い上映時間にも関わらず、極めて退屈だった。作品がテイクオフした直後、「言葉」という重要なテーマを核とする構成に期待感を募らせた。「言葉」を大切に生きてきた人が「言葉」を失ってしまう。そこで湧き上がる哀歓は、きっと残酷なまでにリアルだろうと思ったからだ。しかし、この期待はすぐに裏切られてしまう。

早々に「言葉」を失ったアイリスの、表現者としての顔はいつの間にか埋没し、ひたすらにアルツハイマー病患者として、あるいは夫の視点から見た自由奔放な女性としての記憶だけがスクリーンに刻まれる。果たしてそれでいいのだろうかと、疑念を抱かざるを得ない。もっと実直でありながらドラマティックとなるような描き方があったのではないか。
 
映像や演出という点で特筆すべき点はなく、否が応でも「物語」や「テーマ」の話になってしまう。これだと、原作を読めばいいのではないかと思うこと——自戒すること——もあるが、仕方がない。。。
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