LalaーMukuーMerry

ソハの地下水道のLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

ソハの地下水道(2011年製作の映画)
4.3
ポーランド映画で地下水道ときたら、てっきりワルシャワだと思ってたけれど、そうではなく、今はウクライナ領となっているリヴィウという町の地下水道が舞台。ドイツのシンドラー、日本の杉原千畝と同じように、ナチスドイツによるユダヤ人迫害の中で、命がけで彼らを守ったポーランド人のソハという人物の実話に基づく物語。幼い頃、彼に助けられて生き延びた少女が、60年以上も後に出版した回想記(2008)をベースにした作品。

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俺の名はソハ、下水道の管理の仕事をしている。だから地下水道のことは隅々まで知っている。ナチスがこの町を占領して以来、ゲットー地区から地下水道に逃げ込んで来たユダヤ人を時々見つけるけるようになった。ナチスに通報しない代わりに、奴らからお金を巻き上げて小遣い稼ぎをしている。

ところがある日、数多くのユダヤ人が一度に地下水道に逃げ込んでいるのを見つけて驚いた。女や子供までいる。彼らを一カ所に匿うのは難しい。2つに分かれて隠れるように教えてやった。お金は巻き上げたが、その金で買った食料を届けてやったらとても喜ばれた。妻には以前から小遣い稼ぎのことは伝えていたが、大勢のユダヤ人を匿っていることを知ったとたん、バレたら家族全員が殺されると猛反対された。

だが匿う期間が長引くにつれて、次第に親密になってくると、俺の中に何としても彼らを守り抜くんだという気持ちがはっきりしてきた。こんなに臭くて、汚くて、ネズミが出て、真っ暗で、迷路のような地下水道の奥深くまで追いかけてくるドイツ兵はほとんどいない。細心の注意を払えば大丈夫なはずだ。妻も一蓮托生と覚悟してくれたようだ…

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いつ終わるかわからない地下水道の逃亡生活。こんな環境でも人の愛欲は消えはしない、そしてそれが生きる希望につながっていく…、こんなに強烈なセックスシーンはなかなかない。

長い暗闇生活が終わってマンホールから地上に出た時の、まぶしい光と爽やかな空気! よかった~と安堵したその後で、文章で淡々と示されるソハのその後が悲しい…