このレビューはネタバレを含みます
原題『In Darkness』
第二次大戦中の実話を基にした作品。
その名の通り、暗闇の黒を基調にした映像は閉塞感と緊張感が絶え間なく、長尺なのに目が離せなくなっていました。
硬質で生々しく、目を背けたくなるような非情な側面をそのまま見せつけてくる。
そして、極め付けの濃厚な人間臭さ。
下水道という劣悪な環境下で、14ヶ月も身を隠し続ける中でのユダヤ人たちの人間模様。ナチスの支配下にある国の有り様。
匿い続けるうちに心が通い、見放す事ができなくなった主人公ソハの人間味。
人間の愚かさと尊さと…
名状しがたい気持ちにさせる。
あっさりとしたラストだけど…
観る側の気持ちを、無駄に浮き上がらせないのは…とてもリアルだなと感じた。
終わってスッキリした…で済む話ではないんだから、それが当然のことだよね。
見捨てるしかなかった人たちもいて…
巻き添えになった友人もいて…
無責任なハッピーエンドなんて無い。
ホロコーストのように、ユダヤ人たちがただ生きる事すら否定する考え方とか…その思想に染まって、人間を人間と思わない選択をしてしまう事、思考停止の恐ろしさ。
それでも懸命に生きようとする意思。
それを守ろうとする気持ち。
両方とも、同じ人間から出てくるもの。
どちらも人間なのならば…
優しい選択ができる世界であって欲しい。
そうじゃなきゃ…
心なんて要らないでしょ?
なんで考える自分が在るのか。
なんで感じる心が在るのか。
私たちは大きな過ちを犯したんだから…
間違わないようにできるはずなのにね。