タケオ

大アマゾンの半魚人のタケオのレビュー・感想・評価

大アマゾンの半魚人(1954年製作の映画)
4.2
 数ある「ユニバーサル・モンスターズ」の中でも、本作『大アマゾンの半魚人』(54年)に登場する半魚人のギルマンのデザインには突出したものがある。ある種の「神々しさ」とでもいうべきだろうか。その唯一無二のミステリアスな佇まいは、まるで「未知の世界」の驚異そのものを体現しているかのように美しい。
 しかし、それと同時に半魚人のギルマンは、どこまでも孤独な存在だ。まるで『キング・コング』(33年)に登場するコングのように。コングが髑髏島にやってきた美女アン・ダロウ(フェイ・レイ)に惚れてしまったように、ギルマンもアマゾンの奥地へとやってきた学者のケイ(ジュリー・アダムス)に惚れてしまうが、異端の存在であるがゆえに、ギルマンの「愛」が彼女に受け入れられることはない。そこからは、『美女と野獣』や『オペラ座の怪人』とも通ずる伝統的な「愛の悲劇」の構図が垣間見える。どこまでも孤高で、そしてどこまでも孤独なギルマンの姿が鑑賞者の胸を打つのは、それが人間の実存と響き合うものだからだ。惚れた相手に拒絶され、傷つき、そして討伐されてしまうギルマンは、報われない愛を抱えたまま彷徨う孤独な人間そのものなのである。
 『パンズ・ラビリンス』(06年)や『パシフィック・リム』(13年)の監督として知られるギレルモ・デル・トロも、そんなギルマンの姿に強烈なシンパシーを覚えた1人だった。7歳の頃に本作を鑑賞したデル・トロは、「ギルマンとケイが結ばれる」という自分なりのハッピーエンドを思い描き、そして『シェイプ・オブ・ウォーター』(17年)を制作。作品は世界中から絶賛を浴びた。2018年のゴールデングローブ賞の授賞式でデル・トロは、自らを支えてくれたモンスターたちに感謝を捧げている。「私はモンスターたちに救われ、赦されてきました。ありがとう、モンスターたち、本当にありがとう」——と。そんなデル・トロのスピーチに涙を流した「人間(モンスター)」は、きっと僕だけではないはずだ。
タケオ

タケオ