こたつむり

ザ・ビーチのこたつむりのレビュー・感想・評価

ザ・ビーチ(2000年製作の映画)
3.9
“期待”という毒蛇に騙され、楽園を追われた哀れな作品。

本作の劇場公開は2000年。
主演のディカプリオが『タイタニック』で一世を風靡してから、まだ2年も過ぎていない頃。だから「レオ様の作品だから観に行く」という人が多かった…と記憶しています。

しかし、本作は見事なまでに。
そんな“レオ様ファン”を返り討ちにした作品。
確かに予告編だけを観たら、お気楽極楽なリゾートアクション…にも思えますが、ダニー・ボイル監督の作風に“レオ様”を期待するほうが間違っているのです。

でも、もしかしたら。
監督さんはそこまで計算していたのかもしれません。『タイタニック』の“レオ様”イメージを引き摺ることも、劇中で“楽園”を追い求める彼らも…根っこは同じに見えますからね。公開当時に映画雑誌で酷評されていたのも…作品のテーマを考えると皮肉な話なのです。

だから、色眼鏡を外して鑑賞すれば。
本作の見どころがディカプリオの瑞々しい肌ではなく(そこも確かに美味しいのですが)、監督が描くソリッドな“楽園論”であることは一目瞭然。相変わらずの“ブチ切れた演出”も含めて、落差のあるフォークボールを楽しむ作品なのです。

まあ、でも、欲を言うならば。
「フォークボールを投げますよ」と予告するような演出は蛇足でしたね。イギリス人の騎士道精神に則ればフェアなのかもしれませんが“物足りなさ”に繋がる要因にもなりますし。正々堂々と“闇討ち”をすれば、着地点の皮肉がもっと深いところまで刺さったと思います。

それにしても。
脚本の時点から本作が“賛否両論に分かれる”ことは予想できたと思うのですが、ディカプリオは自ら出演を希望したそうですね。うーん。すごいチャレンジ精神です(王子様的なイメージを払拭したかったのかもしれませんが…)。なんだか、彼のことが今まで以上に好きになってきましたよ。

まあ、そんなわけで。
“ヴァケイション”ではなく、ソリッドでファニーな作品…ですが、物語を存分に楽しむためには、猜疑心に満ちて鑑賞するよりも、頭のネジを“あえて”ゆるめたままのほうが良いと思いますよ。

そして、最後に世界名言集から引用を。
―期待とは、人を狂わせるに容易い麻薬である(ブート・R・コッター)
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