nanaaron

ザ・ビーチのnanaaronのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・ビーチ(2000年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

五感を覚醒させ、「生きてるー生きてやがるー」を実感させる力がビーチには有ります。

無論、くそ綺麗なところ限定です。

ホンモノのビーチは、本能をバキバキに呼び起こす体験なのです。

足の裏から直に伝わる砂の感触。

足の裏には末梢神経が集中し、足の裏で感じることは、カラダ全体で感じているのと同義。

地面を踏みしめ、反発され、足跡が残り、波に消えていく。

無限に続く海から聞こえる波の音は信じられないくらい深く、ザラザラと鼓膜を震わせる。

青い波面は不規則に動いているように見えて、実は完璧な法則性のもとに制御され、全ての分子が有るべき場所に存在した上で、完全過ぎる全体像を作り上げてる。

その波も、勿論一瞬で消えていく。

潮臭さは生命の起源を連想させ、母なる地球に想いを馳せる。

この映画で描かれる2つの世界は、どうしたら楽とか、どうしたら簡単とか、誰が正しいとかじゃないでしょう。

自然から与えられた脳は、キャパがでか過ぎるのです。あまりに刺激的過ぎて、なかなか耐えられない。

勇気を通過儀礼とした、秘密の楽園はまさに高いレベルで勇気を求めるのです。

ぶっ飛んだレベルの人間性です。甘さの欠片も無い、丸裸の人間性。

エグくて、生々しくて、ヤバイのです。

付いてこれないだろ!

リチャードはそれを肌で感じ、一方で、楽園の住人に巣食う甘さを目の当たりにしてきました。

おぃ…実は付いていけてないぞみんな…

分かってるようで分かってない。

人間を分かってない。人間を分かってるのって俺だけじゃね?

そして遂にリチャードは、
神の視線を手に入れた=頭が逝っちゃった。

あの住人たちにおいては、いつか楽園が終わるのは必然でもあります。

でも楽園が終わるのは、この世界がもはや、楽園以外の考え方によって席捲されてるし、支配されているからでも有るのです。

たかが中2病の破天荒記でないのは、リチャードは学んじゃってるからです。パラレルワールド往復記なのです。

気づいた時には遅い。

事実、世の中を圧倒し支配しているのは、いまお前が退屈に感じてる、その世界なんだ…

人間性って何だよ!自由かよ!それとも束縛かよ!きっと両方だ。

違った世界の、違った自由。違った世界の、違った束縛。

一つのサイドと、もう一つのサイド。どっちかが真とか嘘とかじゃなくて。

たかが違う側面だ。ただ同時に存在するパラレルな側面で、それらが交わることはない…
nanaaron

nanaaron