このレビューはネタバレを含みます
五感を覚醒させ、「生きてるー生きてやがるー」を実感させる力がビーチには有ります。
無論、くそ綺麗なところ限定です。
ホンモノのビーチは、本能をバキバキに呼び起こす体験なのです。
足の裏から直に伝わる砂の感触。
足の裏には末梢神経が集中し、足の裏で感じることは、カラダ全体で感じているのと同義。
地面を踏みしめ、反発され、足跡が残り、波に消えていく。
無限に続く海から聞こえる波の音は信じられないくらい深く、ザラザラと鼓膜を震わせる。
青い波面は不規則に動いているように見えて、実は完璧な法則性のもとに制御され、全ての分子が有るべき場所に存在した上で、完全過ぎる全体像を作り上げてる。
その波も、勿論一瞬で消えていく。
潮臭さは生命の起源を連想させ、母なる地球に想いを馳せる。
この映画で描かれる2つの世界は、どうしたら楽とか、どうしたら簡単とか、誰が正しいとかじゃないでしょう。
自然から与えられた脳は、キャパがでか過ぎるのです。あまりに刺激的過ぎて、なかなか耐えられない。
勇気を通過儀礼とした、秘密の楽園はまさに高いレベルで勇気を求めるのです。
ぶっ飛んだレベルの人間性です。甘さの欠片も無い、丸裸の人間性。
エグくて、生々しくて、ヤバイのです。
付いてこれないだろ!
リチャードはそれを肌で感じ、一方で、楽園の住人に巣食う甘さを目の当たりにしてきました。
おぃ…実は付いていけてないぞみんな…
分かってるようで分かってない。
人間を分かってない。人間を分かってるのって俺だけじゃね?
そして遂にリチャードは、
神の視線を手に入れた=頭が逝っちゃった。
あの住人たちにおいては、いつか楽園が終わるのは必然でもあります。
でも楽園が終わるのは、この世界がもはや、楽園以外の考え方によって席捲されてるし、支配されているからでも有るのです。
たかが中2病の破天荒記でないのは、リチャードは学んじゃってるからです。パラレルワールド往復記なのです。
気づいた時には遅い。
事実、世の中を圧倒し支配しているのは、いまお前が退屈に感じてる、その世界なんだ…
人間性って何だよ!自由かよ!それとも束縛かよ!きっと両方だ。
違った世界の、違った自由。違った世界の、違った束縛。
一つのサイドと、もう一つのサイド。どっちかが真とか嘘とかじゃなくて。
たかが違う側面だ。ただ同時に存在するパラレルな側面で、それらが交わることはない…