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舞踏会の手帖のHKのレビュー・感想・評価

舞踏会の手帖(1937年製作の映画)
3.5
タイトルだけは昔から知っているフランス映画の古典中の古典。
モノクロ・スタンダード。CS録画で初鑑賞。
ジュリアン・デュヴィヴィエ監督作としては唯一観たことのあるジャン・ギャバン主演の『望郷』と同じ年に公開された作品でした。

未亡人となった金持ちで美豹のクリスティーヌは、20年前の舞踏会のダンス・パートナーを次々に訪問する旅に出ます。
この社交界デビュー時の“舞踏会の手帳”に記された8人はかつて彼女に愛の告白をした男たちです。

要するに過去に自分が振った相手を“今どうしてるだろう”と一方的に訪ねて回るというノスタルジックな感傷とも悪趣味(?)ともとれるお話でした。

舞踏会から20年も経ってるわけですが、今も自分が美人で相手も憶えているという自信あってこその行為でしょう。
私はこんなに大勢にモテたという確認作業とも言えます。

で、いきなり訪問された相手の側はというと、当然ながら結婚していたり、それどころじゃなかったりするわけで、いい迷惑だったり、ある意味残酷な仕打ちだったりもします。

主役のマリー・ベルは製作当時、設定どおりの36歳。
オムニバス形式で登場する相手役の8人は当時の豪華キャストなんだそうです。
古典すぎて私は誰一人知りませんでしたけど。

なんだか金持ちの未亡人の気まぐれにつき合わされたような映画でしたが、モノクロながら映像がとても凝っています。
カーテン越しのシルエットやオーバーラップ、一瞬のスローモーションなどの幻想的な技法やさまざまなギミックが楽しめます。

過去の記憶というものは時間の経過とともにどんどん美化されるものなんだな~と、あらためて思わされる映画でもありました。
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