ちろる

地獄門のちろるのレビュー・感想・評価

地獄門(1953年製作の映画)
3.9
まさか70年近く前に撮影されたとは到底思えないほどの、とにかく鮮やかなカラー映像、そして衣装に引き込まれる人間ホラー時代劇です。

ストーカー肉食系田舎侍VSノー天気草食系夫

心の葛藤を押し隠し、強い信念を持つ袈裟とは対照的に彼女を取り巻く男どもは愚かである。
夫は結構優しい穏やかな人であったが、
相当な想いを抱えつつも帰った妻をよそに読書しながらウトウトする姿にはちょと、ちょっとちょっとと思ったよね。
京マチ子さまが纏う豪華絢爛な着物と彼女が琴を弾く姿は美の再骨頂のよう。
簾越しに見える満月の光は袈裟の大きな眼に溜まる涙を照らし嗚呼・・・
大きな後悔を抱えても、過ぎてからではもう遅し。
力尽くで人の心など奪えると思った罪
愛し合ってるのに苦しみを吐露できなかった罪
いくつもの罪が重なり合って悲劇の結末まで一直線。
妖艶な京マチ子さまは、このような聖女よりも個人的には魔性の女の方が好きですが、それでも日本映画界を初期から背負ってきたあの彼女の存在感は、長谷川一夫氏の大根演技(申し訳ない)をうまくカバーして、立派な平安時代サスペンスと仕上がっている。

現代であればドロドロのメロドラマなのかもしれないが、テンポの良いプロットと、艶やかな京マチ子さまがこんな風に画面に淑やかに置かれれば、こんな風に日本映画史に残る作品となるのは言うまでもありません。
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